Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第535号(2022.11.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

◆海を守りながら経済や社会全体を持続可能に発展させることを目指すブルーエコノミーは、持続可能な開発目標(SDGs)の目標14「海の豊かさを守ろう」に貢献することが期待されている。すでに本誌は、「持続可能な開発利用のためのブルーファイナンス」(第480号) や「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合の設立」(第487号) でこの主題を取り上げているので、ご存じの読者も多いであろう。2022年8月27日・28日の両日にチュニスで開催された第8回アフリカ会議(TICAD8)において、持続可能な水産・養殖の推進、IUU漁業対策、200人の人材育成の実施などアフリカにおけるブルーエコノミーへの日本の貢献が表明された。
◆Cherif SAMMARIチュニジア国立海洋科学技術研究所(INSTM)教授からは、2019年にアフリカ連合(AU)が発表した『アフリカのブルーエコノミー戦略』をご紹介いただいた。2063年にはブルーエコノミー関連セクターとその構成部門は、5,760億米ドルと7,800万人の雇用を創出すると期待されているが、障害となっているのは資源の開発・利用にあたって旧態依然とした方法が用いられていることだという。これを打破するアフリカにおける望ましいブルーエコノミーの枠組みの提言について、ぜひ本誌をご一読いただきたい。
◆中野俊也NPO法人長崎海洋産業クラスター形成推進協議会長崎海洋アカデミー所長からは、かつて台長を務められた長崎地方気象台に残る石黒鎭雄博士の業績についてご寄稿いただいた。ご子息は2017年にノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロ氏である。石黒博士が渡英に至った経緯と、石黒博士の特筆すべき業績としての長崎湾内で観測される「あびき」(長崎の方言)という潮汐と重なる副振動の研究が紹介されている。その発生メカニズムについて今なお解明すべき点があるという。潮流・波浪の模型実験と実測のための電子管自記波浪計や流速計の発明や、『長崎海洋気象台の歌』の作曲など多才な人物であった石黒博士の橫顔が垣間見れる論稿である。
◆矢動丸琴子(一社)Change Our Next Decade代表理事からは、大学生・大学院生で構成される「人と自然がより良く共生する社会の構築」を目指す同団体の活動をご紹介いただいた。第2回生物多様性国家戦略小委員会における政策提言をはじめ、若者らしい視点と方法で美しく豊かな海洋の恵みを未来につなげようとする彼らの活動と、試行錯誤を重ねながらも継続しようとするその志の高さと行動力に敬意を表したい。(坂元茂樹)

第535号(2022.11.20発行)のその他の記事

ページトップ