Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第52号(2002.10.05発行)

第52号(2002.10.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆本号は、文部科学省科学技術・学術審議会海洋開発分科会の答申「長期的展望に立つ海洋開発の基本的構想及び推進方策について」の特集である。本答申は今後10年を見据えたわが国海洋政策の基本となるものである。

◆従来の「海洋開発審議会」が、科学技術・学術審議会海洋開発分科会に代わった経緯については、平オピニオン、文部科学省研究開発局海洋地球課オピニオン双方で紹介されている。海洋政策の性格とそれを議論する場の不整合が予測されることについては、本誌創刊予告号で指摘したところでもあった。平オピニオンからは分科会がこの問題について深く議論したことがうかがわれる。とりあえず今後10年の海洋政策の基本は答申されたが、海は永遠であり、わが国にとっての海洋政策の重要性も永遠である。分科会の議論が良い成果を生むことを期待したい。

◆今回の答申のポイントは「海洋を知る」「海洋を守る」「海洋を利用する」という3つの政策の、よりよいバランスの確保への転換の指摘である。ミシュレは、1861年にすでに、「地球上に生命を誕生させた海は、もしも人間が、そこを支配している秩序を尊重するすべをさえ心得ており、それを乱さぬよう心がけているならば、依然としてこの生命の恵みの母でいてくれもしよう」と述べ、「海の気前よさは物惜しみする大地を恥じいらせるのである。海は与える。だから、享受するすべてを知りたまえ。豊穣な海は尽きることなく、あなた方に授乳してくれるだろう」と、知ることの重要性と、それによって実現する豊かさをたたえる(加賀野井秀一訳『海』藤原書店)。

◆平オピニオンが指摘するように今や時期は熟した。21世紀のわが国が、海を「よく知り」、「よく守る」ことによって、それを「より良く利用する」社会を実現しうるように、日本全体に広範な議論を巻き起こそうではないか。(了)

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