Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第50号(2002.09.05発行)

第50号(2002.09.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆本誌もはや50号。50と言う数字自体に意味があるわけではないが、一つの切れ目・節目でもあり、そんな感慨を込めての「東京湾特集」である。
◆すべての日本の海は、日本人の生き方・ありようを映し出す鏡である。白砂青松の海は、そのような海をはぐくむ暮らしぶりを映し出し、現在の東京湾は、現在のわれわれの暮らしぶりを映し出す。現在の東京湾は、臨海部の埋め立てによるコンビナート造成を主要な手段として、1950年代後半から極めて短時間のうちに世界有数の経済社会を作り上げ、その成果を高度な消費生活という形で享受する、2600万の巨大な密集した飽食人口を背後に抱える海である。
◆家康の江戸開府以来続いた江戸前の海の豊饒さが昭和30年代初期に失われ、われわれが多くのものを失ったことを、東京湾が変わったと表現すべきではない。東京湾に映し出されるわれわれの暮らし方が変わってしまったのである。
◆菱田昌孝氏の「江戸前の東京湾は呼び戻せるか」、信国正勝氏の「東京湾を親しみやすく美しい海にするために」は、いずれも「東京湾再生計画」による東京湾の改善への期待がまだ可能なことを示す。渡邉豊氏の「東京湾臨海部の都市計画の功罪」は、変わることによってわれわれが失う、目に見えないものの大きさを指摘する。いずれにせよ万物は流転し、良かれ悪しかれ、われわれもまた変わらざるをえない。
◆「初秋や命の色の海の紺」(矢須恵由)。「命の色」である「海の紺」を取り戻すために、われわれはこれからの10年、20年でいかに変わりうるのか。本誌はその変化を映し出す鏡である海の代弁者としてそれを見守っていきたい。

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