Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第48号(2002.08.05発行)

第48号(2002.08.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「赤潮は神の忿(いかり)か風も死し」(松本旭)。海面を茶褐色に濁らせたり、血のような赤に変じたりする赤潮は、海水中の植物プランクトンの急増が原因といわれる。沿岸域での魚介類の養殖や陸上での人間活動の累積によって、海の生態系に微妙なバランスの変化が生じ、赤潮を発生させる。赤潮は、海が発する人間のあり方についての警鐘であろう。大自然によるこのような因果の示し方を「神」の怒りととらえ、おごりがちな自らを戒めるのは人の英知か。

◆千葉オピニオン、大川オピニオンは、ともに食物連鎖の中で生ずる微妙な変化の目に見えぬ集積を追跡することによって、地球の温暖化や人口爆発といった人類の危機に、静かにではあるが着実に対応する手段として、海の観察の重要性を指摘する。華々しい巨大プロジェクトだけではなく、あらゆる命の母である海に、きめ細かな目を総合的に向けつづける努力を、国全体として絶やさないようにしたいものである。鈴木オピニオンは、最近、羽田空港の沖合い展開との関係でも世間の注目を集めている浮体構造物を、EEZ海洋総合管理基地や広域型移動防災基地へ活用する方策を示す。ビジョンを実現するツールである技術が、逆に、ビジョンの新たな展開への貢献を考えるという視点は、生物が環境変動に対して受身であるばかりではなく、その活動によるフィードバックがまた地球環境を変化させるという視点に重なる。

◆ワーズワースは、Our souls havesight of that immortal sea which broughtus hitherと詠った(Ode Intimationsof Immortality from Recollections ofEarlyChildhood)。人や命の内なるものと、永続する海のかかわりに、よりいっそう深く思いを致したい。

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