Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第44号(2002.06.05発行)

第44号(2002.06.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆ワールドカップがすでに始まり、梅雨も始まる2002年の6月である。国内のさまざまな改革は頓挫しつつあるように見え、政治家の不祥事は引きも切らず、外務省・外交官の信用は内外で地に落ち、景気の回復も掛け声ばかり。はなはだ気勢が上がらない。万が一、頼みの綱であるサッカーの成績もはかばかしくないようだと、本当に、このまま奈落の底へとめどもなく落ち込んで行きそうでなにやら怖い。

◆などと、とつおいつ心にうつるよしなし事に頭を悩ませ、本号掲載のオピニオンと投稿に目を通しているうちに、昔読んだ三好達治の「荒磯(ありそ)」という詩をふと思い出す。「一羽とぶ鳥は 友おふ鳥ぞ 荒磯  一羽とぶ鳥は 粽ながし鳥 臀おもし鳥  一羽とぶ鳥は 日ぐれてとぶぞ 荒磯」。荒磯で友から離れて友を追い、粽長く臀重い格好の悪い鳥でも、日暮れた後になお飛ぶ覚悟があれば、それはそれで良いか、と少し開き直るのも一興。

◆佐尾オピニオンは、すでに多くの国民の記憶から薄れつつあるナホトカ号事件のその後をフォローしている人の存在を教え、過去の苦い教訓を十分に生かす社会の賢明さの必要を指摘する。中野オピニオンは、海上輸送が陸上輸送に比較してコストの優位を持たなくなったという、あまり知られないショッキングな国内の事情を指摘し、その対策として港湾利用の柔軟化の重要性等を説く。また、古澤投稿は、海上自衛隊幹部候補生教育の経験を通じて、海が国際人養成の自然塾であることを改めて思い出させる。三氏の貴重なご意見に学び、日暮に慌てず、あらためてゆっくりと明日に向かって飛ぶ気概を養いたい。(了)

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