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オーシャンニュースレター

第365号(2015.10.20発行)

第365号(2015.10.20 発行)

海洋スポーツと天気予報について

[KEYWORDS] ピンポイント天気予報/マリンレジャー/気象情報
(株)サーフレジェンド代表取締役社長◆加藤道夫

長年海洋スポーツに関わっていると、天候の急変で"まさか"の怖い体験をしたことが一度や二度はあろうかと思います。最新の海の天気予報を活用して、その"まさか"を想定内にすれば事故は未然に防げます。
海洋スポーツの安全安心を高めるため、海の高精細な気象情報の活用法を紹介します。少しでも健全な海洋スポーツの発展の一助になれば幸いです。


天気予報の用語

天気予報の説明を始める前に、気象庁が定めた予報用語の「風速」と「波高」についておさらいしておきましょう。
「風速」とは、地上10mの高さでの10分間の平均風速を指し、「最大風速」とは10分間の平均風速の最大値を意味します。また、風速計の測定値を「3秒間平均」した値を「瞬間風速」といい、その最大値が「最大瞬間風速」です。最大瞬間風速は、最大風速の1.5~2倍近くになるので、例えば、接近中の台風の中心の最大風速が20mの予想だとしたら、最大瞬間風速は40m近くの暴風になることが想定内だと言えます。次に、TVやラジオなどの天気予報で使われている「波高」とは、「有義波高(ゆうぎはこう)」のことで、届いた100波の高い方から30波の平均波高を表します。統計的に、100波に1波は有義波高の1.5倍、1000波に1波は1.9倍になるとされています。
仮に有義波高が1mの時に、1000波に1回押し寄せてくる"一発大波"は2m近くに達して、磯などの釣り人を飲みこんでしまうことが想定内です。
その他の予報用語についても、ぜひ気象庁のホームページ※1に掲載されていますのでこの機会に確認してみてください。

気象情報を読み取る

■画像1:7日先の週間予想天気図

■画像2:今年8月に台風15・16号による高波浪が続いたときの風の予想図

■画像3:画像2と同じ時の波(高波浪)の予想図

■画像4:『マリンウェザー海快晴』のピンポイント数値予報『岩骨』の例

さて、民間気象会社が提供している海の高精細な気象情報を活用するうえで大切なことは、天気・風・波などの予想データの地域軸と時間軸を頭の中で重ね合わせて映像としてイメージできるか否かです。
その一例として、一週間先の神奈川県三浦市城ケ島の磯に釣りに行きたい場合で説明してみましょう。

1.天気予報の基本である天気図からチェック
実況天気図 → 24時間予想天気図 → 48時間予想天気図 → 週間天気図の順に見て(画像1参照)、一週間先の釣行日までのおおまかな大気の流れを把握します。
地域軸として、城ケ島がある関東周辺では、高気圧に覆われて天気は良さそうなのか、低気圧は接近していないか、台風の接近は大丈夫か、高気圧の吹き出しによるうねりは届いてこないか、など時間軸を頭の中で重ね合わせます。
高気圧は、北半球では風が時計回りで周囲に吹き出しています。この吹き出しの風が強いとうねりに発達することがあります。荒天が予想されていれば、誰も海に出ませんが、晴天でごくたまにしか入ってこない一発大波が来るような時にこそ事故は起こります。波の予想には、波が到達してくる波の方位を表した波向(はこう)があります。仮に波向が東であれば、東に向いている磯などでは、波高が3m以上、周期が12秒以上の数値が出ているような時には(岬など場所によって差があります)、一発大波で磯全体がさらわれるような時がありますので、釣りを見合わせるか、うねりが入りづらい西向きのポイントを選ぶことが賢明です。

2.地元気象台発表の天気予報をチェック
各地方気象台発表の週間天気予報から、釣行予定日の天気、気温、降水確率をチェックします。

3.釣行予定日の3日(72時間)以内の地域情報のチェック
チェックしたい地域の「風と波の予想画像」を見て、磯釣りに危険を及ぼす、強い雨、強風、高波が、時間軸で予想されていないかをチェックします。
風が海から吹いて(海風=オンショア)面が荒れた場所のことを風表(かぜおもて)と言い、逆に陸から風が海に向かって吹いて(陸風=オフショア)面がきれいなことを風裏(かぜうら)と言います。風向を考慮して、海の危険な要素を少しでも減らすことが大切です(画像2・3参照)。
図の色分けは、波の高さを表しています。色が、黄色→赤色→紫色に近づくほど波高が高くなり、矢印は波の向きを表します。外房以北、東伊豆、遠州灘は、高波浪なのに比べて、東京湾や相模湾および駿河湾の東部は波高が低いことが分かります。

4.最後に「ピンポイント予想」をチェック
インターネット上で公開されている海洋気象予報の『マリンウェザー海快晴』※2を例にしますと、ポイント検索で「城ケ島」を入力し、島の図の中にある「岩骨」というポイントをクリックすると、1時間ごと72時間先までの高精細な気象情報ページに遷移します。
「天気・風・波・潮 すべての予想を見る」を選ぶと、天気、気温、湿度、風向、風速、波向、波高、周期、潮を、一覧表で1時間ごと72時間先まで見ることができて全体像がつかみやすくて便利です(画像4参照)。

気象情報を読み解き、海を楽しむ

天気予報はとても奥が深く、しかも経験が求められます。ある気象台の予報官とお話したときに、全国の気象予報官は天気予報を発表する前には、必ず気象台の屋上に登って観天望気(かんてんぼうき)をしてから発表しているとお聞きしました。観天望気(かんてんぼうき)とは、かつての船乗りやお百姓さんがしていた、空の雲や風の流れなどから天気を予報することです。天気予報は、デジタルでは完璧に予想ができない以上、アナログによる微調整が求められるのです。
最近では、無料または有料の気象情報が数多く提供されていますので、海における活動用途に応じた情報提供を選んで上手に活用してください。海はきちんと学んで接すれば、とても気持ちの良い楽しいフィールドです。高精細な気象情報を上手に活用されて、安心安全にもっともっと海を楽しんで頂けたら幸いです。(了)

※2 マリンウェザー海快晴=(株)サーフレジェンドと京都大学との産学連携で研究した気象予報の特許技術が生かされ、利用者の6割が漁師さんなどのプロユースの海の天気予報です。月額300円(税別)の利用料がかかりますが、10日間の無料お試しがあります。 http://umikaisei.jp/

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