Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第362号(2015.09.05発行)

第362号(2015.09.05 発行)

大人が全力で楽しむと子どもたちも全力で楽しむのだ!

[KEYWORDS] 環境学習/大阪湾/地域協働
Gata girl◆松重摩耶

私たちGata girlは、学生時代に干潟や海辺にかかわる研究をしたことが縁で、卒業後も趣味で、研究、環境学習、イベントの企画や運営をしている。
Gata girlの活動拠点の海辺はさまざまであり、私は尼崎・西宮市の子どもたちを対象に、プログラム『子どもによる地域協働と海洋文化の醸成』に取り組んでいる。まずは大人が本気でわいわい楽しむことが、継続的な活動の源になっていると実感する。


Gata girlとは

学生時代に、徳島大学の環境衛生工学研究室で干潟や海辺にかかわる研究をしていて、卒業後も趣味で研究や環境学習、イベントの企画や運営をしている3人のgirlたちのことを言います(girlと言うにはその年齢を過ぎたような気もしますがここは厚かましく)※1。活動拠点の海辺は大阪湾を中心に、徳島、西宮、尼崎、加古川とさまざまです。またそれぞれに仕事がありながらの活動になるので、なかなかお洒落にスピード感を持って活動することは難しいのですが、それでも海辺での活動はとても楽しいです。今回は、そんな活動を通して気づいたこと、楽しいことについてご紹介させて頂こうと思います。

プログラム『子どもによる地域協働と海洋文化の醸成』

■図1:学習プログラム「子どもによる地域協働と海洋文化の醸成」での協働の仕組み

2013(平成25)年にNPO「人と自然とまちづくり」の平井 研さん、森紗綾香さんたちと、尼崎市と西宮市の子どもたちを対象に、プログラム『子どもによる地域協働と海洋文化の醸成』(地域活性化を担う環境保全活動の協働取組推進事業)を行いました。これは、地域の中学、高校、民間企業、兵庫県、尼崎市、徳島大学の協働で行われ、私にとっては初めての大きなプログラムで、気づきもたくさんありました(図1)。またこのプログラムの面白いところは、尼崎市と西宮市は武庫川を挟んだ隣り合う街であるのに、その海辺や街の雰囲気が全く異なっており、それぞれの近くの学校の生徒を対象にプログラムを実施した点でした。
尼崎市の浜辺は戦後の高度経済成長期に埋め立てられ、工場からの排煙や排水によって空と水は汚れ、日本で一番汚れた地域となっていました。その結果、運河や港には人は寄り付かず、家庭や学校でも「危ない、汚い、行ったらあかん」と教えられ、人との係わりがまったくなくなったところになりました。一方、西宮市の御前浜・香櫨園浜は、他の地域の埋め立てが進む中でも、この浜辺は地域の企業や住民の熱心な埋め立て反対運動により守られ、今もマリンスポーツやBBQでにぎわい、住民のボランティア環境保全活動が行われています。
プログラムでは、このように異なる地域環境で育った子どもたちが一緒に海辺で学び、最後には「子ども協議会」をつくって、海の環境について考え、私たちに何ができるかについて議論することができました。例えば、尼崎運河でのパドルボート、西宮御前浜でのシーカヤック、尼崎・西宮の水質調査、尼崎のびのび公園での菜の花の種まき、西宮恵比寿神社や菰樽(こもだる)の製作会社などの社会見学ツアーを行いました。海の環境だけでなく、地域の歴史や食文化についても学んだことで幅広い視野で考えることができたように思います。子ども協議会では、子どもたちの中から「上流、下流の利き水をやってみたい」「浜辺でドッチボールをやりたい」「もっと地域の魅力を伝える看板をつくりたい」、という声がきかれ、その中でも、市民が地元の海辺のことを知らないことを鑑み、運河の魅力を伝える案内板を駅前に設置することになりました。

■左上/尼崎運河でのパドルボート体験
左下/西宮御前浜でのシーカヤック体験
右/西宮、尼崎の水質底質調査

継続的な活動の源「幸せの公式」を求めて

このようなプログラムで私が最も驚いたのは、これだけ多様なスタッフ、協力支援者、生徒たちが1年間通して、互いに補いつつ、とても楽しく活動できたことでした。その理由をみなさんが活動する姿を見ながらじっくりと考えると、「はっ!」と気づくことがありました。それは、すべての大人がプログラムの内容を「わいわいわい」とはしゃいでいたことでした。最初はまったく興味のなかった子どももそんな大人をみていると「なんだ?なんだ?」という風になり、その場のわくわく感に巻き込まれ、最後にはみんなが笑顔、笑顔となっていました。そして、その子どもの姿は学生時代の私とまったく一緒でした!
私ごとで恐縮ですが、社会人になっても趣味で研究や活動をしていることについて、「どうして?」とたびたび聞かれることがあります。私は面白いことに貪欲な人間なのですが、なぜ、このような活動を続けているのか? 自分でもよくわかりませんでした。しかし、このプログラムを体験して発見しました。「みんなが楽しい」×「ボランティア」×「環境を良くする」=「とてもおもろい」ということを。このような「おもろい」が多くの人で共有されるときに人は幸せを感じ、それが継続的な活動の源になっているのではないでしょうか?
今回もこのような執筆の機会を頂いたことに心より感謝しています。今後も、このような「幸せの公式」が成り立つような海の環境活動を仲間と一緒に継続していきたいと考えています。(了)

※ GATA girl ブログ http://gata-girl.blogspot.jp/

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