Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第362号(2015.09.05発行)

第362号(2015.09.05 発行)

鹿屋体育大学の海洋スポーツへの取り組み

[KEYWORDS] 研究教育/競技力向上/社会貢献
鹿屋体育大学助教◆榮樂洋光

鹿屋体育大学海洋スポーツセンターは、1987年に学内共同教育研究施設として設立された。海洋スポーツに関する教育・実技指導および研究活動を行うほか、課外活動等や外部団体活動の受け入れにも活用し、実践的指導者の養成、競技力向上および生涯スポーツとしての底辺拡大を目指している。
ここではそれらの活動について紹介させていただく。


絶好の設備環境とロケーションで行う教育および研究

■鹿児島湾に面している鹿屋体育大学海洋スポーツセンター

■ディンギーヨットをはじめとしてさまざまな艇を保有する

鹿屋体育大学海洋スポーツセンターは、鹿児島県鹿屋市高須町に位置しています。西側に錦江湾を有し、南西方向に開聞岳、北側には桜島とロケーションは最高です。加えて温暖な気候と、季節に応じた適度な風が吹くこともあって海洋スポーツを実施するには絶好の環境にあります。当センターでは、普及を目的として使用される、ディンギーヨット、ウインドサーフィン、スタンドアップパドルボード(SUP)、シーカヤック、シットオンカヤック、カナディアンカヌーを所有しています。また、ヨットやウインドサーフィンの競技用艇種も有しており、課外活動に活用されています。加えて、安全管理および実技指導に利用する動力船を常備しており、各種海洋スポーツ活動を円滑に安全に行える環境が整っています。
学部の授業は、海洋スポーツ専門種目を有する学生への授業と海洋スポーツ専門外の学生への授業に大別されます。初めて海洋スポーツを受講する学生は、海洋スポーツ活動を行うための安全確保に関する基礎知識を学び、判断力を持って自ら楽しめる能力を養うことを目的として、ヨット、ウインドサーフィン、カヌー種目を学習します。海洋スポーツ専門種目の学生は、各種海洋スポーツ種目の基礎的、応用的な知識や実践力を身につけた後、生涯スポーツや競技スポーツの場面で指導ができる能力を身につけていきます。自らの実践力を高めるトレーニング方法を習得すると同時に、指導法を学び、「できる」だけでなく「伝えられる」学生の育成は、卒業後の進路先や競技活動で役立っていることと思います。大学院では、海洋スポーツ活動の計画・遂行やイベントの管理運営等についての知識と実践力を養うこと、科学的手法で収集されたデータをもとに、スキルや体力等を診断し処方する能力を養うことを目的に授業が展開されます。
研究は、ローイング競技(カヌー・ボート)およびセーリング競技(ヨット・ウインドサーフィン)の競技力向上に関するテーマを中心として行っております。具体的には、海上および湖上において感覚的に理解されてきた事象でありながら、データとして示されていなかったテーマに着目し、実践現場に役立つ形で提供できることを心掛けています。これまでの研究においても、ローイング競技における水上パフォーマンス評価に関する研究や、セーリング競技における艇の航跡、スピードの評価が検討されており、これらが基礎的データの構築や競技力向上へ貢献しています。さらには、競技力向上だけではなく海洋スポーツ普及に関する研究テーマも取り上げており、プログラム作りやゲレンデ調査等を行っています。この成果によって海洋スポーツ型教育旅行のためのプログラムが構築されています。

課外活動と卒業後の進路

当センターは、大学から車で10分程度に位置し、学生が競技に専念できる環境が整っており、これまでもセーリング競技、ローイング競技ともに世界選手権代表選手が輩出された実績を有しています。学生らは、学んだ知識や技術の獲得を専門競技へ実践しようとする日々の繰り返しです。私達は、学生の支援となるように、専門の知識や技術を提供し、競技力向上に資するよう助言を行っています。2020年の東京オリンピック日本代表を目標に取り組む選手もおり、本年もカヌー競技では世界選手権出場を果たしました。
海洋スポーツ関連学生の卒業後の進路は、競技継続者もいますが、全国的に指導者が少ない中、おおくの卒業生が中学・高校教員、国体の強化指導スタッフなど、各地で指導者として活躍しています。彼らの活動は幅広く、課外活動の指導だけではなく、生涯スポーツや生涯学習の指導者の役割も担っています。大学時代における教育の成果を発揮し、卒業生が今後も全国の多くの海洋スポーツシーンにおいて活躍してくれることを期待しています。

社会貢献

■毎年行われる学長杯オープンヨットレース

当センターにおける社会貢献活動として、一般市民向けの公開講座を開き、カヌーやシュノーケリング種目において、初級者を対象に基本的な実技の指導を行っています。また、小学生を対象としたマリンスポーツキャンプも開催しており、安全に楽しく海で遊べるような導きを意識して活動を行っています。また、パワーアップ研修、教員免許更新講習なども実施しており、現職教員の先生方にも、海洋スポーツの楽しさをお伝えすると同時に、海への理解も深めていただくことで、学校教育における生涯学習としての海洋スポーツの推進を期待しているところです。
この他、本学学生や一般市民への海洋スポーツの普及啓発と、地域の海洋スポーツ愛好家の親睦を図る目的で「鹿屋体育大学長杯オープンヨットレース」を毎年開催しています。公開講座の修了生などを含めた地域のヨットクラブ、個人活動者、高校ヨット部等の幅広い参加者を募り、毎年50艇の参加を集め、当センターにとって欠かせないイベントとなっています。さらに、また鹿屋市主催のマリンスポーツイベントにも協力し、カヌー、ヨット、SUPなど多くの種目で一般市民の方々に楽しんで頂いています。

おわりに

当センターでは研究・教育・社会貢献を柱とした活動を行っております。その活動をまとめたものが『海洋スポーツ研究』として年1回発行されています。多くの方の目に触れ、海洋スポーツの普及に貢献できれば幸いです。そして、今後も海洋スポーツが理解され、楽しまれるよう、充実したプログラムの構築、普及活動、人材育成に貢献してまいりたいと思います。(了)

●国立大学法人鹿屋体育大学海洋スポーツセンターhttp://www.nifs-k.ac.jp/kaispo/index.html

第362号(2015.09.05発行)のその他の記事

ページトップ