Ocean Newsletter
第361号(2015.08.20発行)
- 法政大学地域研究センター客員研究員◆林 千絵
- NPO法人共存の森ネットワーク理事長◆澁澤寿一
- 東京MXテレビ記者◆竹田有里
- 第20回海の日(2015年7月20日)の各種行事
- ニューズレター編集代表(国立研究開発法人海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男
編集後記
ニューズレター編集代表(国立研究開発法人海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男◆近年になく強いエルニーニョ現象が太平洋で発達している。この現象は日本周辺に冷夏をもたらすというのが通説であるが、連日猛暑が続いている。20世紀最強のエルニーニョ現象が起きた1997年の夏もやはり猛暑になった。その原因はインド洋に発生していたダイポールモード現象にあることがその後の研究から明らかになったが、今年もダイポールモード現象が発生し、エルニーニョ現象の影響を打ち消すどころか、逆に猛暑を呼び込んでいるようだ。太平洋とインド洋、それぞれの大洋に発生する気候変動現象のせめぎ合いがこれから晩秋にかけてますます激しくなり、各地に異常気象をもたらしそうだ。地球温暖化の中断(ハイエイタス)はこの二つの現象がそろい踏みした1997年に始まったが、今年はこの中断が終わり、温暖化がより強く顕れる気候レジームに突入していく可能性が高い。
◆今号では「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の作業部会の国内支援事務局で活躍してこられた林千絵氏にタイムリーに登場していただいた。温暖化した大気の熱の行き着く先は海であり、したがって海の温暖化が着々と進行している。次期IPCC報告書に向けて、アカデミーの世界でも海の温暖化、より広く捉えるならば海の変化への関心が高まっている。
◆澁澤寿一氏には高校生と海人の対話による「聞き書き甲子園」について紹介していただいた。海の現場に長く生きてきた人々との対話とそれを丁寧に文字に起こす作業を通して、生きること、働くことの意味を若い時に深く考えることは、その後の人生の貴重な財産になるであろう。わたし達の生きる意味─生きがい─は、自己を忘れ、他のものと心を一体化することにあると考えるならば、そのよき実践例がここにある。「人は仕組みだけで暮らしを作ることはできない」という一文にとても共感を覚えた。
◆テレビ記者をされている竹田有里氏には異常気象のつながりに関する番組制作を通して体験された海外の方々との一体感を生き生きと描いていただいた。取り上げたテーマこそ違え、澁澤寿一氏のオピニオンにも通じるものを感じた読者も多いのではないだろうか。(山形)
第361号(2015.08.20発行)のその他の記事
- 海についての理解の深まりと残された諸課題 法政大学地域研究センター客員研究員◆林 千絵
- 「聞き書き」がつなぐ海人の想い NPO法人共存の森ネットワーク理事長◆澁澤寿一
- 「Sacred Eco Journey 環境巡礼の旅」の番組制作を通じて 東京MXテレビ記者◆竹田有里
- 編集後記 ニューズレター編集代表(国立研究開発法人海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男
- インフォメーション:第20回海の日(2015年7月20日)の各種行事