Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第315号(2013.09.20発行)

第315号(2013.09.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所名誉教授)◆秋道智彌

◆去る8月20~21日、都内の日本財団会議室で海洋政策研究財団主催の「島と周辺海域の持続可能な開発の推進に関する国際セミナー」が開催された。リオ+20のあとを受けて、海洋における開発と保全をめぐる議論は次の段階にむけて大きく舵を切ろうとしている。会議はそのための提言を作成するための有識者会議であった。海外からは豪州とフィジーの海洋政策研究機関からと、国内からは海洋政策研究財団をはじめ、全国の大学・研究機関、水産庁、海上保安庁など、海洋の総合的な取り組みを反映する多彩な参加者があった。
◆太平洋における諸問題をわが国に照らして考えれば、日本における産官学の取り組みはきわめて多面的な課題に相通じる。豪州の参加者からは、自分の国の研究が島嶼国のために役立っているとする発言があった。日本でも同様な趣旨の発言を聞くことがある。もちろん、海洋研究の分野にもよるだろうが、あらゆる研究はどこかで世の中、世界とつながっているとする認識を肝に銘じておきたい。
◆セミナーでの発表で、沖縄県八重山諸島における海域管理についての取り組みの紹介が東京大学の福島朋彦上席主幹研究員からあった。その元となるユニークなシンポジウムが本年2月に石垣市において竹富町主催で開催された。本誌で紹介のあった竹富町長の川満栄長氏が中心となり、海洋政策研究財団、(公社)日本海難防止協会、NPO境界地域研究ネットワークらの後援で実現したものだ。その中味の最重要点は、海域を管理するうえでの地方交付税のあり方を再検討することである。陸域にたいする地方交付税があるなかで、広い海域をもつ離島の海域保全には海域そのものを交付税算定の面積として加えることが国土の保全と管理のうえで公平性を担保するものであるという主張である。海は陸地ではないから、交付税の対象外とする従来型の発想では陸と海とを一体的に捉える近年の議論にはそぐわない。陸と海をバラバラに切り離して考えることの時代錯誤に風穴をあける発想が中央ではなく、地域から浮上したことに大きな意義があると思うがいかがだろうか。
◆この種の発想転換の必要性は、日本の同質性社会にたいする鋭い批判として日本科学技術ジャーナリスト会議会長の小出重幸氏が指摘している。津波や原発事故への対応にしても、「内の眼」とともに「外の眼」を意識する重層的な視野と卓見がのぞまれる。合意形成という用語が氾濫するなかでの英断こそが指導力を発揮することになるはずだ。
◆原発事故後に浮上したエネルギー論について、近い将来を見据えた提言を足利工業大学の牛山泉学長からいただいた。わが国における自然エネルギー源を活用した浮体式洋上風力発電の大きな可能性についてである。急激なエネルギー転換はありえないとする内向きの考えを打ち破るのは正にいまだ。今回の三つの提言を読んで、すがすがしい秋を迎えることができる思いに胸が高まった。(秋道)

第315号(2013.09.20発行)のその他の記事

ページトップ