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第296号(2012.12.05発行)

第296号(2012.12.05 発行)

改正離島振興法の概要について

[KEYWORDS] 地域格差の是正/定住の促進/離島の自立的発展
国土交通省国土政策局離島振興課課長補佐◆中村克彦

離島振興法の改正が10年ぶりに行われた。今回が6回目となる。全面施行は平成25年度からであるが、それまでの間に離島振興基本方針や離島振興計画等の策定作業を国、都道府県で進めることになる。
本則で14カ条が新設された他、多くの条文で追加規定が盛り込まれた。法改正の概要や改正に至った経緯等を紹介する。

はじめに

離島振興法は昭和28年に議員立法により制定され、以降10年ごとに議員立法により改正されてきた。今般、その6回目の改正が行われ6月20日に成立した。
改正法は、同27日に交付、一部施行されたが、全面施行は平成25年4月1日となる。それまでの間に、国では政令改正、離島振興基本方針の策定等を行うとともに、都道府県では離島振興計画、離島活性化交付金等事業計画の策定準備を行うこととなる。
この改正法が成立に至るまで、国会議員の諸先生方をはじめ、地方公共団体等の離島関係者の方々に多大なるご尽力を頂いたところである。この場をお借りして御礼を申し上げさせて頂きたい。
本稿では、法改正の概要とともに、改正に至った経緯等について概説したい。

離島の現状

海で本土と隔絶された離島では、人・物の移動に係る費用の低廉化、産業基盤や生活環境等に関する地域格差の是正が課題となっている。このような中、人口減少や高齢化が進行(図1、2参照)するとともに、基幹産業である一次産業の不振が継続するなど、離島をめぐる現状は厳しい。
例えば離島地域の人口は、離島振興法が制定された直後の昭和30年には、約96万人と全国の1.1%のシェアであったが、平成22年では約39万人、0.3%と激減しており、人口減少率は他の条件不利地域に比しても著しい。また、離島の基幹産業ともいうべき農林水産業については、生産額が平成2年から平成20年にかけて概ね半減し、同様に就業者数も減少し続けるなど、雇用情勢は厳しい状況となっている。
無人化が懸念される離島もある中、人口の著しい減少等を防止し、離島における定住を促進していくためには、雇用を適切に確保していくことも喫緊の課題となっている。

法改正の議論

今回の改正の大きな特徴は、民主党、自民党、公明党、共産党、社民党、みんなの党および国民新党の離島政策に係る実務者により各党実務者会議が設けられ、立法作業の当初より7党体制で協議、検討が進められたことである。
この各党実務者会議では、平成23年11月から改正法案の審議が行われた6月までの間、13回に渡る精力的かつ詳細なご議論を頂いた。
この他にも、民主党、自民党、公明党においては、離島の現状を把握すべく関係者からの意見聴取や現地視察が行われ、それらの結果を踏まえて各党内での議論が深められた。
関係議員により熱心にご議論頂いた結果は、離島振興法改正法案としてとりまとめられ、6月15日に衆議院国土交通委員長により同委員会に提案された。同法案は、同日の衆議院国土交通委員会および衆議院本会議、同19日の参議院国土交通委員会、同20日の参議院本会議においていずれも全会一致で可決され成立した。なお、参議院国土交通委員会では法案審議も行って頂いた。

法改正の概要

今回の離島振興法改正では、本則で14カ条が新設され、その他の多くの条文でも様々な追加規定がなされるなど大改正となった。
まず、第1条の目的規定に「居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止」を掲げられ、併せて「定住の促進」が明記された。また、第1条の2として新たに基本理念および国の責務が規定され、国は、離島振興施策が「居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに離島における定住の促進が図られること」等を旨として講ぜられなければならないという基本理念にのっとり、「離島の振興のため必要な施策を総合的かつ積極的に策定し、及び実施する責務を有する」こととされた。
離島の無人化や著しい人口減少を防止するには、離島の自立的発展を促進し、生活の安定および福祉の向上を図るとともに、地域間交流を促進し、定住の促進を図る必要がある。かつての離島施策は、その条件不利性に鑑み、産業基盤および生活環境等の整備を強力に推進することが中心であったが、その後併せて産業振興施策や地域における創意工夫を生かした施策も加わってきた。
今回の改正では、就業促進、介護サービスの確保、人材の確保・育成等が基本方針に掲げる事項として新たに追加され、また、離島の活性化に資する事業を推進するための離島活性化交付金等事業計画が新たに規定されるとともに、産業、生活、防災等定住を支える各般にわたる改正がなされるなどソフト施策等に関して新たな追加がなされた。

おわりに

今回の離島振興法の改正では、関係者の方々の様々な意見や思いが、熱心な議論や検討を経て条文に数多く盛り込まれた。本稿でその概要しか紹介できなかったのは残念であるが、来年度に改正法が全面施行された際には、ぜひ一度、条文※に目をお通し頂きたい。大改正の内容がご理解頂けると思う。
離島振興法とその下に展開される様々な離島振興施策は、離島にとって欠かせない非常に重要なものである。新たな離島振興法に基づき諸般の離島振興施策が円滑なスタートを切れるよう、当面は様々な準備作業を全力で進めていきたい。(了)

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