Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第257号(2011.04.20発行)

第257号(2011.04.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所・教授)◆秋道智彌

◆今回の東日本大震災で多大な犠牲者と損失を被った地域とそこに住む人びとに心からお見舞い申し上げます。わたしは岩手県大槌町の現場に3月末に赴き、その惨状を目の当たりにした。道路に打ち上げられた多くの漁船は津波の破壊力を見せつけた。今後の復興に向けて日本国が取り組むべき課題は、山積している。こうしたさい、基本的な計画なり構想が従来型の復旧にだけ終始して立案されるならば、新しい国土計画とはならないのではないか。最近、レジリアンス(回復力)という用語がつかわれるが、元の状態に戻すことの意味を慎重に考えねばなるまい。
◆本号で放送大学の來生 新さんは、復興の指針として沿岸域の統合的管理の具体案を提起されている。それは市町村面積に沿岸域を加えて、地方交付税算定の基準を抜本的に改革するというものだ。明治期以降、沿岸域には地先の海面における漁業権を物権として位置付け、漁業協同組合が管理・運用する権利を一元化してきた。地方自治体が地先海面をも含んだ領域を管理する方策は日本の歴史上、かつてない。それだけに、今後この問題は政府、地方自治体を中心に議論を進めるべき最優先課題といえるだろう。
◆統合的管理に不可欠な要素は、何だろうか。アルティスタ人材開発研究所の玄間千映子さんは、「注意力」「観察力」をキーワードとして、人材のマネジメントを進めることが日本人の特性に見合った管理方法だと主張する。「心を一つに」のスローガンはいままさに必要とされており、海外のメディアが報じる、復興に向けた日本人の態度へのコメントにも通じるのではないか。
◆前述した大槌町では、町内の地区リーダーが先頭に立って、活動されていた。秋祭りのリーダーがそのまま、復興活動を差配されている姿を目の当たりにして、地域の強い力を感じた。(秋道)

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