Ocean Newsletter
第250号(2011.01.05発行)
- 民主党衆議院議員、海洋基本法フォローアップ研究会座長◆細野豪志
- 海洋政策研究財団会長◆秋山昌廣
- 東京大学総長◆濱田純一
- ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形俊男
編集後記
ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形俊男謹賀新年
◆平成二十三年の幕が開いた。昨年の夏に成長を始めた巨大なラニーニャ現象が東部太平洋にどっかりと腰を据え、世界各地に異常気象を引き起こしている。今年の夏も猛暑や集中豪雨が危惧される。天気予報並みの精度には至っていないが、気候科学の進展で近未来の季節の様子が見えるようになってきた。翻って、国際政治・経済はますます不確実性が増し、内政も混迷を深めるばかりである。異質な政治体制を持つ国家の著しい台頭もある。わが国は人間の自由、安全、幸福を保障する成熟した法治国家として、世界に向けて明確に発信して欲しい。理念を共有する国々との連携こそ、最も強力な国家の安全保障になるのではないか。今年を真の意味で国際化元年としたいものである。
◆昨年の話になるが、ユネスコの政府間海洋学委員会(Intergovernmental Oceanographic Commission;略称IOC)設立50周年を記念して、12月2、3日に国連大学で文部科学省と日本ユネスコ国内委員会の主催により、太平洋とインド洋の気候変動に焦点をあてた国際シンポジウムが開催された。IOCの設立には、戦後間もない時期にもかかわらず、わが国が重要な貢献をしている。1955年、東京大学の日高孝次教授とデンマークのアントン・ブルーン博士の尽力で、鳥居坂の国際文化会館において海洋科学に関するユネスコシンポジウムが開催され、ここでわが国は国際海洋学諮問委員会(IACOMS)の導入と東アジアの海洋学の推進を提案した。二回のIACOMS会合を経て、1960年にコペンハーゲンで開催された政府間の海洋研究に関する会議(ICOR)でIOCの設立が提唱され、同年、ユネスコの第11回総会で認められたのである。海洋科学外交において、わが国にはこのように先達が築いた輝かしい歴史がある。この努力は太平洋、インド洋や熱帯の海の実態を把握する国際共同調査の推進とデータの共有という明確な目標をもってなされたものである。この意味で、次の半世紀を展望する国際シンポジウムが再び東京で開催されたことは意義深い。
◆年頭を飾る本号には、まず海洋基本法の提案者の一人であり、海洋基本法フォローアップ研究会の座長でもある細野豪志議員にご登場いただいた。細野議員の掲げる八つの重点分野は海洋立国にはどれも不可欠なものである。具体的な施策の実現に向けて是非ともご尽力をお願いしたい。本財団の秋山昌廣会長には、昨年来の話題になっている尖閣諸島問題に関連して、隣国中国の進める輿論戦、心理戦、法律戦からなる三戦戦略にどのように向き合ってゆくべきかを論じていただいた。隣国との関係において叡智ある行動をとることができるかどうか、本年も海洋外交の試練の年になりそうである。東京大学の濱田純一総長には、海との豊かな関係で過ごした明石での原体験に基づき、海に親しむことの大切さについて寄稿していただいた。近々、東京大学では日本財団の支援を得て「海洋教育促進研究センタープログラム」が発足する。こうした活動を通して、海の研究成果がわかりやすい形で社会にどんどん発信され、人々の成長の早い段階から海に親しむ機会が増えることは海洋立国の基盤強化に貢献するであろう。(山形)
第250号(2011.01.05発行)のその他の記事
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- 編集後記 ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形俊男