Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第239号(2010.07.20発行)

第239号(2010.07.20 発行)

編集後記

総合地球環境学研究所 副所長・教授◆秋道智彌

◆国連のCoP10関連の仕事で、秋田県のハタハタ漁について調べる機会があった。ハタハタは一時壊滅的な資源状況にあったが、3年間の禁漁とその後のきびしい資源管理方式を導入することで回復の兆しが見られるようになった。ハタハタの寿命は4年ないし5年。12月の厳冬期、波に乗って沿岸の藻場で産卵し、その後春から初夏にかけて200m以深の海底へと移動する。そして再び冬になると沿岸を目指す。水温が1.5度の冷たい海から10数度の海まで旅をするわけだ。こうした魚の生態を知ると、驚異としか言いようのない感動を抱く。7月初旬、ハタハタは水深100mくらいのところを遊泳しているのだろうか。「海の日」の今月20日ころには、まちがいなく水深200mに達するはずだ。
◆「海洋基本法」成立から3年。わが国における海洋政策をめぐるこの間の動きは活発だ。大陸棚の延長申請が国連に申請されたのが2008年11月。かつて米国のトルーマン大統領が自国の大陸棚の領有宣言を出したのが1945年9月のことである。日本の提案はそれから60数余年が経過している。海洋基本法フォローアップ研究会の髙木義明衆議院議員や経団連の海洋開発推進委員長である元山登雄氏が指摘されるように、大陸棚の確保は今後の海洋政策を実現するうえでその礎となるにちがいない。
◆水深200mの洋上で、ノルウェーが浮体式の洋上風車を設置したことを、東京大学の荒川忠一教授の論考から知った。クリーンなエネルギーを供給する風車は日本では普及しているとは言い難い。ここでも日本は出遅れている。
◆水深200mの日本海では底曳網漁船が底魚を獲るために操業している。水産業では決して他国に後れをとるわけではないが、底曳網漁は無駄のない漁法ではない。「くず魚」を大量にだすからだ。この海にハタハタの棲みかがあることをもう一度思い出しておこう。人間は驚異の自然にたいして果敢に開発を進めようとしているが、ハタハタのことも忘れずにいたいものだ。水深200mゾーンがいろいろな意味で今後のキーワードとなることはまちがいあるまい。(秋道)

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