Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第217号(2009.08.20発行)

第217号(2009.08.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所副所長・教授)◆秋道智彌

◆夏本番。海水浴といえば、関東の近場では江の島から湘南が一番人気だ。三浦半島にある三崎もマリンレジャーだけのメッカではない。三崎には日本のみならず世界でも著名な臨海実験所がある。創設は1886(明治19)年というから、120年以上の歴史をもつことになる。これまでに移転・改築され、現在までに整備が格段に進んでいる。三崎の海は豊かな海岸動物相で知られる。臨海実験所で研究にはげむ幸塚久典さんは、およそ一般人の生活とは縁もゆかりもないウミシダの研究の意義を熱く語る。しかも、かつては眼の前の海に数多かったウミシダが減少しているだけに、研究と環境保全を一体のものと考える必要性を指摘されている。研究と環境教育、環境保全は三位一体の関係にある。研究だけに埋没する姿勢は現代、許されないことなのだ。
◆環境の保全と地球温暖化防止の取り組みは、海洋世界における人間活動についても大きな課題となっている。たとえば、最近、頻発する海洋での超高速船と鯨類との衝突について、回避のための技術開発が長足の進歩をみせている。東京海洋大学の加藤秀弘さんは、クジラと超高速船の衝突回避プロジェクトのリ-ダーだ。事前に音波でクジラを船に近づけないための工夫や、クジラの季節回遊、目視調査などの情報の組み合わせ、操船技術の向上など、きめの細かい対応策を提案されている。クジラと人間との関わりは、捕鯨やホエールウォチングだけではない。海洋動物と人間との望ましい付き合いが叫ばれるなかで、衝突を回避するための技術革新は世界に発信できる重要な科学的成果となるにちがいない。
◆地球温暖化防止のため、陸上起源の二酸化炭素排出規制とともに、海上での船舶による排出量の削減努力が積み重ねられている。その典型例が船舶における太陽光発電装置の搭載技術である。日本郵船グループの信原眞人さんによると、昨年12月に本格的な太陽光発電装置を備えたAURIGA LEADERが竣工したという。失礼ながら、写真をみると優美な姿形をした船とは決していえないし、太陽光エネルギーによって船が動くなど、にわかに信じがたい。しかし、この船は自然エネルギーにより運行する未来型の「海の女神」になることはまちがいない。この面での技術革新は、21世紀の日本が世界に誇る技術となるにちがいない。地球への貢献にたいする期待に大きく胸を膨らませて見守りたいものだ。といったところで本号を読了して、今年の夏はいい思い出つくりができたようなものだとおもうのだが、読者諸氏はいかがお考えでしょうか。  (秋道)

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