◆今年、横浜港は開港150年を迎える。同じく長崎、函館も安政6(1859)年に開港した。同年、江戸幕府は米国、ロシア、イギリス、フランスなどとの間で貿易上の諸規定を盛り込んだ条約を締結した。これらの開港によって、世界の列強の船と荷物、そして情報が日本に続々と到来することとなった。ひいては、それが明治の開国につながった。もとはといえば、捕鯨船の寄港地として日本を開国する要請があったことも最近では周知されるようになった。横浜市長の中田宏さんが披露されている横浜港の取り組みをみると、日本がこの100数十年のあいだに歩んできた近代化の道は目覚しいものがある。初期には開港といっても日本に不利益な条約であったが、グローバル時代の今日、日本は世界に堂々と胸を張ってわたりあえるまでになった。それに安住してはならない。中田さんが指摘されているように、まさにチャレンジングな点は、経済活性化の起爆剤となればという願いであろう。◆北海道教育大学の尾関俊浩さんによると、カナダのニューファンドランドのNRC海洋技術研究所にある氷海水槽の実験装置を用いた研究は、分野からするときわめて基礎的な範疇に入るだろうということだ。昨今の日本では、プロジェクト型研究が幅を利かせている反面、金も時間もかかる基礎分野が敬遠されがちなことへの疑問を提示しておられる。いろいろな研究があってもよいとおもうのはわたしだけではあるまい。とくに温暖化が叫ばれる昨今、極地の雪や氷に関する関心が高まっている。日本には国立極地研究所があり、全国の大学でも雪や氷を研究するセンターや施設がある。それらをつなぐネットワークづくりを、これを機会に検討してはどうだろうか。◆日本には流氷の接岸する北の海がある一方、暖かい海からの使者を運ぶ黒潮がある。名古屋港水族館顧問の内田至さんは、旧知のかたであるし、水族館内で内田さん、曽野綾子さん(日本財団会長・当時)とわたしとで水族館について鼎談を黒田(渡邊)あゆみさん(NHKアナウンサー)司会でしたことがある。そのときも、ウミガメの悲惨な事故のことが話題になった。永遠の生の営みを浜辺で繰り返してきたウミガメの産卵場を、人間のご都合だけで破壊し、堤防や消波ブロックが阻害してきた。彼らは何も語らないが、人間が海と共生していくための議論をウミガメ問題からでも始めたいものだ。内田さんのやさしいけれど、憤りに満ちた目が浮かぶようだ。 (秋道)
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