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第185号( 2008.04.20 発行)
第185号(2008.04.20 発行)

外航日本人船員(海技者)確保・育成スキーム1期生研修中!

[KEYWORDS] 外航日本人船員/船員教育/乗船研修
(財)日本船員福利雇用促進センター常勤参与◆増田 恵

厳しい国際競争に晒されている外航海運企業では、日本人船員(海技者)数が減少し、この対策が焦眉の急となっている。
人材の確保育成は、各社の雇用が基本であるが、これを補完するものとして、わが国海事産業全体に貢献する海上技術者の育成を目指すスキームが関係者の協力で進められている。
外航日本人船員(海技者)の確保・育成に向けて、官労使が協力して推進する新スキームを2007年スタートさせた。

官労使による確保・育成推進協議会

今日、厳しい国際競争に晒されている外航海運企業にとって、わが国海事社会全体に配慮した人材の確保・育成は極めて困難な状況にある。現在、2千人台まで減少した外航日本人船員(海技者)数も、このままで推移すれば、これを割り込む水準まで縮小する可能性があり、人材の確保・育成に向けた諸環境の整備は焦眉の急になっている。このため2006年5月に、日本船主協会と全日本海員組合は、各社雇用による人材の確保・育成を基本に、これを補完する実効ある「新たな育成システム」の策定が必要であるとの共通認識の下に、「日本人船員(海技者)確保・育成に資するための施策『骨子』」を取りまとめ、国土交通省に対し、これを実現するための国の支援を要請した。
労使の要望を受けて、国土交通省は官労使で構成する「外航日本人船員確保・育成に関する新スキーム導入のための検討調整会議」を設置し、2007年から新スキームを実施するための検討を続けた結果、新スキームの運営は官労使で構成する推進協議会が行うこと、また、新スキームの実施団体として日本船員福利雇用促進センター(SECOJ)を活用することとされ、2007年4月から推進協議会が発足し、新スキームをスタートさせた。

確保・育成スキームの概要

このスキームは、船員教育機関の卒業生(3級海技士資格取得者)を対象に、実際に邦船社が運航する外航商船での船舶職員としての実務経験を通じて、即戦力として活躍できる海技者としてのキャリア形成を図ることを目的としている。育成期間は、導入研修1年とその後の乗船育成期間で構成されている。導入研修においては、独立行政法人海技教育機構海技大学校での座学研修を5カ月とし、乗船研修を挟み、前期(導入座学2カ月)と後期(フォローアップ座学3カ月)に分け、実戦的なカリキュラムを通じ、実務上必要な基礎知識と技能を習得する。乗船研修は7カ月とし、わが国外航船社が実際に運航している商船に研修生として乗り組み、外航船舶職員に必要な実務能力を習得する。この乗船研修では、実務の習得状況についての考課により、2年目以降に船舶職員としての実職が執れるかどうかが評価される。乗船育成期間では、上述の考課を経て、船舶職員として外航商船に乗り組み、実務経験を積んでいくこととなる。
新スキームが、外航船舶職員の採用が厳しい状況が続く下で平成10年度からSECOJにより実施されてきた若年船員養成プロジェクトと大きく異なる点は、同プロジェクトが商船での乗船履歴を積み、上級免状(2級海技士資格)の取得を目的としていたのに対し、新スキームは、資格の取得ではなく、即戦力として活躍できる実務経験の習得を目指していることである。そのため、育成期間を通じて、推進協議会の下に設置される進路指導委員会により、きめ細かい進路指導が行われる。また、育成期間は原則3年(最長5年)であるが、一日も早く本スキームを終え、外航船舶職員としての経験を社会で役立ててもらうため、同委員会により、育成開始時から外航海運企業などへの就職斡旋が積極的におこなわれる。育成期間中に就職が決定したときは、その時点で本スキームから離れることとなる。
育成要員の身分については、導入研修期間中は、SECOJに研修生として登録され、所定の研修手当てが支給される。乗船育成期間中はSECOJが雇用し、乗船に際しては外航船社に出向する。乗船中および下船中を通じそれぞれ一定の賃金が支払われると共に、船員保険などの社会保険が付保され、育成要員がスキームに参加している間、生活面で不利にならないよう配慮されている。

外航日本人船員確保・育成に関する新スキーム

スキーム1期生

スキーム1期生の導入研修は2007年10月に海技大学校での導入座学からスタートした。1期生の募集に当たりSECOJは、「新スキーム導入のための検討調整会議」における準備の進捗に合わせ、各船員教育機関関係者に対し、2007年度からはこれまでの若年船員養成プロジェクトに代えて新スキームがスタートする旨を周知し、4月からの募集に備えた。その結果、1期生は、定員20名に対し、19名から応募があったが、本スキームは外航船舶職員としての実務経験のキャリアパスを提供するものの、将来の就職を保証するものではないところから、10月のスキームの開始までの間に就職が決定したなどの理由による辞退者が出たため、導入研修は11名でのスタートとなった。
応募者19名の内訳は、船員教育機関新卒(予定者)8名に対し、既卒の就職経験者が11名であった。既卒者は外航部員、調査船、内航船など船員からの応募者6名、海事関係を含む陸上職からの応募が5名であった。また、その出身校は商船系大学5名、高等専門学校4名、海員学校/海技大学校6名、水産系3名、およびその他1名となっており、経験・出身校などいずれの面でも多岐にわたっている。新スキーム初年度の第1期生の応募状況はこのようなものとなったが、その背景として、2007年新卒者の就職戦線は前年の4~5月に終っており、しかも特に外航海運関係の求人が活発であったこと、スキームの開始が2007年10月なのに対し募集がその半年前であったため応募者にとってはショートノーティスとなったこと、あるいは、再就職の相談に来た卒業生に新スキームが紹介されたなどの要素が考えられる。現在、募集・選考中の2期生は、新卒者の応募が多数を占めているが、今後の推移が注視されるところである。
1期生の海技大学校による導入座学は、海上災害防止センターに委託して実施した消火訓練・海洋汚染防止訓練からスタートし、レーダ・衝突防止シミュレータ訓練、荷役現場となる石油・LNGターミナル見学など実習・演習が全体の1/3を占める実戦重視のカリキュラムで2カ月間実施された。
昨年12月からは、乗船研修に移行し、邦船社が運航する外航船に順次乗船し、元気に研修を続けているところである。この乗船研修は今年6月まで続けられ、7月から9月までの3カ月のフォローアップ座学を以って本スキームの1年目に当たる導入研修が終了し、考課を経て、2年目の乗船育成期間に移行することとなっている。研修生が各船の指導の下で実戦的な経験を積み、実りある研修を終え、全員が次のステップに進むよう期待されている。
本スキームの実施に当たり、研修生を温かく受け入れて頂いた邦船各社および座学を担当して頂いた海技大学校の関係者のご協力に深く感謝するとともに、今後の研修生の育成についても、引き続き、関係各位のご支援をお願いする次第である。(了)

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