Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第178号(2008.01.05発行)

第178号(2008.01.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・副研究科長)◆山形俊男

◆新しい年が立った。新春を寿ぎ、本号では寬仁親王殿下にご登場をお願いしている。一世紀以上も昔、明治天皇を表敬訪問の後、帰国の途についたトルコの軍艦エルトゥールル号は、明治23年9月16日夜半、台風による暴風により串本沖で座礁し、多くの死者を出した。この痛ましい海難事故の救済活動を契機に始まった両国民の友好関係は今も脈々と続いている。トルコの歴史教科書には必ずこの話が掲載され、また串本姉妹都市通りと名付けられた通りもあるということである。昨秋、尾崎行雄財団の主催で憲政記念館において行われた殿下のご講演を拝聴し、この素晴らしいお話を是非とも読者の方々と共有したいと考え、ご無理をお聞き入れいただいた。殿下の気さくなお人柄が溢れるオピニオンを堪能していただきたい。

◆昨年7月に施行された海洋基本法に基づき、目下、海洋基本計画が立案されている。今年はいよいよ具体的な施策が実施される。大いに期待してゆきたい。この画期的な法案に深く関わって来た小野寺五典議員には海洋戦略を持つ国家の形成に向けた心意気を語っていただいた。世界第6位の宏大な排他的経済水域を持つわが国としては、その持続的な管理、開発、保全体制をしっかりと構築してゆくことの重要性は言を俟たない。一方で、この排他的経済水域の中に閉じこもることなく、世界海洋の統合的管理に向けたメッセージを国際社会に発信し、尊敬される海洋国家の形成を目指してゆくことも等しく重要になる。

◆当財団の秋山昌廣会長は海洋基本法の理念を実現する上で法的な整備が著しく遅れている分野がいまだに存在する事実を喝破する。法的制約により自衛艦は海上交通の安全確保を目的とした出動ができないという現実には驚かされる。国家の存立そのものが海上輸送に依存するといっても過言ではないわが国である。このような不自然な状況は一刻も早く改めなければならない。今年はこのような法制面においても<普通の国>になる初めの一歩を踏み出したいものだ。後顧の憂いなきためにも。

第178号(2008.01.05発行)のその他の記事

ページトップ