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オーシャンニューズレター

第16号(2001.04.05発行)

第16号(2001.04.05 発行)

国際線も含めた抜本的な首都圏空港容量の拡大を

首都圏新空港研究会業務部長◆丸山信一

首都圏空港について、経済界としては、(1)国内線の能力不足への対応はもとより、国際競争力強化の視点から国際線を含めた抜本的な空港容量の拡大が必要、(2)海上における制約条件をクリアした上で抜本的な容量拡大が不可欠なため、長期にわたる滞りない空港能力拡充計画を早急に打ち出すべき、と考える。

首都圏空港の容量拡大のため必要不可欠なプロジェクトである首都圏第3空港(首都圏新空港)構想については、旧・運輸省のイニシアティブのもと昨年9月に発足した「首都圏第3空港調査検討会」による候補地募集に対し16提案が寄せられるとともに、同検討会で東京都ならびに定期航空協会の羽田再拡張案が説明されるなど、複数候補地の抽出に向けた国の調査が進んできており、当研究会(※)としてもその迅速な進展を大いに期待するところである。

一方で、現在の同検討会における議論は羽田空港の国内線の能力不足に対応する第3空港というコンセプトで進められている。これに対し、経済界の立場から当研究会が期待する新空港とは、将来不足するであろう国際線能力にも対応する、十分な離着陸能力を持つ、利便性の高い国内・国際併用空港である。当研究会は成田2期の早期完成を強く希望するが、その後も予想される国際線能力不足にもできるだけ早い時期からの対応が不可欠と考えている。

長期にわたる滞りない着実な空港能力拡充計画を早急に

首都圏新空港の早期実現のために克服すべき課題は多い。首都圏の空はすでに稠密に利用されており、今後、滑走路1本で最低でも10万回規模の年間離着陸回数に対応する飛行経路を、騒音問題をクリアした上で首都圏において新たに確保することは、場所の如何を問わず決して容易ではないと思われる。羽田再拡張構想についても同様の問題があることは言うまでもない。また、船舶航行や漁業などとの調整も重要になる。加えて、10万回規模の容量拡大を何とか実施できたとしても、それだけでは首都圏の空港能力がそれほど遠くない将来ふたたび限界に達するのは必至である。将来、首都圏新空港において十分な回数の離着陸を実現するためには、空域・管制に係る今後の技術革新を大いに期待するとともに、関係者の幅広い合意形成が必要となろう。一方、海上空港の建設は候補地決定から開港まできわめて長期間を要するプロジェクトであり、かつ途中での計画変更も困難であるため、首都圏新空港候補地の抽出にあたっては、首都圏の空港能力を遅滞なく、かつ長期的に増大させていく整備計画と、その具体的な方法論を早い段階から明確にしていく必要があるだろう。

わが国の将来の鍵を握る国際競争力強化と抜本的な空港容量の拡大

首都圏における長期的な国際航空需要の見通しについては、施設容量が頭打ちのため実績がほぼ上限に達し横這いであった成田の今後の航空需要をどう予測するのかということになるが、GDPの長期見通しひとつとっても判断が分かれるところではないかと思われる。加えて、関西国際空港2期、中部国際空港などこれから開港する大都市圏の国際空港との棲み分けという視点も重要との議論がある。

しかし、首都圏の国際線をどうするかという問題は、取りも直さず世界都市東京を擁する首都圏が、激化するグローバルベースの都市間競争の中でどのように生き残っていくのかという大きな政策的判断を要する問題である。50年後、100年後の日本の国土・社会・経済は、少子高齢化が進む中、アジアを中心とする諸外国からヒト・モノ・カネを呼び込み一大集積地となり得るような魅力ある都市づくりができるかがその発展の鍵を握っていると言える。その都市づくりを首都圏で実現していく施策のひとつとして、国内線のみならず国際線能力において抜本的な拡充が不可欠であると考えている。そういった中・長期的な観点から将来のわが国のあり方や首都圏新空港のあり方が各方面で議論されることを大いに期待したい。(了)

※首都圏新空港研究会=新空港の早期実現のために民間の立場から促進活動を行うことを目的とした団体。(社)経済団体連合会、(社)経済同友会、東京商工会議所並びに(社)日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の4団体が協議し、企業レベルの産業横断的な組織として平成5年3月8日に設立された。設立時の会員数は140社、会長は斎藤英四郎(新日本製鐵株式会社名誉会長)、平成14年10月より千速晃(新日本製鐵株式会社代表取締役社長)。なお、同研究会は平成15年3月31日をもって解散し、その活動はJAPICに引き継がれている。

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