Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第168号(2007.08.05発行)

第168号(2007.08.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(東京大学大学院理学系研究科教授・副研究科長)◆山形俊男

◆多くの人々が久しく待ち望んで来た海洋基本法が7月20日に施行された。同法第29条の規定に基づいて、首相を本部長とする総合海洋政策本部が新設され、内閣官房長官および海洋政策担当相の下に8省庁から37人の職員が結集し、活動を開始した。いよいよ中長期の具体的な政策となる「海洋基本計画」の策定作業が本格化することになる。真の海洋国家を目指して、強力な政策が次々に立案され、実施されることを願う。

◆今号は海洋基本法施行を祝う特集第二弾である。官界からは前国土交通省事務次官の安富正文氏および文部科学省研究開発局長の藤田明博氏にご登場願い、それぞれ国土交通省、文部科学省の取り組みを解説していただいた。海を知り、守り、利用するには「海洋知」の創出、蓄積が不可欠である。この英知を世界と未来に展開し、持続型の社会を築いてゆくには、長期的な視点を持って人材を育成してゆかねばならない。東京大学の小宮山 宏総長には、このような方向性を持って学内横断型の組織として新規に導入された「海洋アライアンス機構」について解説していただいた。後の世にその先見性を高く評価される組織に育って欲しいと思う。

◆さて、祝日「海の日」の前後には、広域分散型と集中型の二種類の自然災害の凄まじさを改めて思い知らされることになった。まず台風4号が一昨年8月に米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナと同じカテゴリー5に分類されるほどに台湾付近で発達し、しかもまるで秋の台風のごとく日本列島を舐めるように移動した。豪雨、暴風、高波によって各地に大きな災害をもたらしたのである。台風の猛威が消えやらぬ16日の「海の日」には、マグニチュード6.8の新潟県中越沖地震が発生して、柏崎市を中心に1,800人を越える人々が負傷し、13,000棟以上の家屋が被害を受けた。被災地の一刻も早い復興を願う。

◆今回の地震では東京電力の柏崎刈羽原子力発電所も被害を受けたが、中核施設である原子炉が損傷しなかったのは不幸中の幸いであった。しかし再稼動までにはかなりの月日を要するようだ。もうすぐ梅雨が明け、盛夏に向かう。電力需要もピークになるであろう。特に首都圏では徹底した省エネに努める必要がある。  (山形)

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