Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第162号(2007.05.05発行)

第162号(2007.5.5 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(東京大学大学院理学系研究科教授・副研究科長)◆山形俊男

◆新年度が始まり、大学のキャンパスに再び活気が戻って来た。大学人として最も時の移り変わりを感じる季節である。この時期、地球全体に目を転じるとどうだろう。熱帯太平洋では昨年来の弱いエルニーニョ現象が終息し、ラニーニャ現象が発達している。季節の変わり目にこのような海洋変動が起きると、大気に影響して異常気象を起こしやすいようだ。ペ・ヨンジュン主演の韓国映画ではないが、首都圏でも時ならぬ〈4月の雪〉を見た。1988年にも太平洋は同じような状況にあり、やはり4月に雪が降っている。ラニーニャ現象は小笠原高気圧を強め、東アジアに猛暑をもたらすので、今年も暑い夏になりそうである。

◆これまで、海洋基本法の制定に向けた本財団の活動について折に触れて紹介してきたが、自民党、民主党、公明党など多数の賛成により、4月3日に衆議院本会議を通過し、4月20日には参議院本会議でも可決され、成立した。

◆この海洋基本法の第二十条は海上輸送の確保に関するものであり、〈国は、効率的かつ安定的な海上輸送の確保を図るために、日本船舶の確保、船員の育成及び確保、国際海上輸送網の拠点となる港湾の整備その他の必要な措置を講ずるものとする〉と明言されている。そこで、冨士原康一氏に、世界経済変動の荒波をもろに受ける海運業界において安定的にわが国の海運活動を強化し、同時に日本人船員の育成、確保を可能にする税制改革案について解説していただいた。白須宏氏には、大規模コンテナターミナルの整備の遅れから、急速に国際ハブ港の地位を失いつつある、わが国の港湾の強化策について提言していただいた。

◆海洋基本法の第十七条は海洋資源の開発及び利用の推進に関するものである。長くなるが引用すると、〈国は、海洋環境の保全並びに海洋資源の将来にわたる持続的な開発及び利用を可能とすることに配慮しつつ海洋資源の積極的な開発及び利用を推進するため、水産資源の保存及び管理、水産動植物の生育環境の保全及び改善、漁場の生産力の増進、海底またはその下に存在する石油、可燃性天然ガス、マンガン鉱、コバルト鉱等の鉱物資源の開発及び利用の推進並びにそのための体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする〉とある。わが国は世界のマグロ漁獲の三分の一を消費する、マグロ大国である。原田雄一郎氏には、マグロ漁業の管理を通して、海洋資源の持続的な活用に向けたわが国の国際イニシアティブの重要性を指摘していただいた。画期的な海洋基本法の下で、世界をリードする海洋国家の実現に向けた施策が次々になされてゆくことを期待したい。 (山形)

第162号(2007.05.05発行)のその他の記事

ページトップ