Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第121号(2005.08.20発行)

第121号(2005.08.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(総合地球環境学研究所教授)◆秋道智彌

◆われわれは、海から何を、いかに学ぶべきか。本号を読了して考えた。海を肌で感じる体験主義がその根幹にあるとする主張で、3者の意見は共通しているように思える。しかしながら、その体験をことばであらわし、仲間と共有し伝達していくことは意外とむつかしい。まして、共生、循環、持続可能性など昨今はやりのことばだけを掲げれば事足りるものでもない。田村さんの総合教育論は、具体的な学習内容を子どもの発達にあわせたマトリックスの提唱であり、いわば教育の骨組みを示したものとして画期的な意義をもつものだ。

◆細部にわたっての内容が述べられていないとおもうのは間違っている。現場に即したいわば個別論を提案したのが山崎さんによるアオウミガメの事例だ。小笠原以外の地域では、アカウミガメを対象とした同様な試みがなされていることは周知のことである。山崎さんは、個別の取り組みをインターネットや交流会をつうじてリンクさせる試みを同時並行して企画している。まさに、個別から連携へと発展するダイナミックなプログラムとしての取り組みといえそうで心強い。

◆これにたいして、西本さんは五島列島の小値賀町(おじかちょう)でのくらしの実体験から、地域全体が優しいまなざしをもって子どもたちに接している実態を訴えている。循環型社会の標語が都市では空疎に響くが、島ではそれが眼に見える、とする指摘は非常に重い。

◆海の教育についていえば、都会の子どもよりも海辺のちいさな学校の子どものほうが、海に接する機会もおおいだろうし、汚染されていない海で多様な生き物に出会うことだろう。他方で、山国の子どもたちは日常、テレビや本でしか海を理解していないが、かれらは森や田んぼで別の生き物と出会うのだ。かれらに共生とか循環とかの意味がどのように理解されているのか。海や山を題材とする地域からの教育論の展開が今後の大きな課題といえまいか。(了)

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