Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第116号(2005.06.05発行)

第116号(2005.06.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授)◆山形俊男

◆数年ぶりにソウルを訪ね、延世大学の海洋セミナーに参加して来た。羽田空港から金浦空港への直行便を利用したので、国内旅行並の便利さである。広大な丘陵地帯に展開する開校120周年を迎えた緑豊かなキャンパスではカチガラスが忙しく巣作りに励んでいた。今秋、公開予定のペ・ヨンジュン主演映画<四月の雪>のクライマックスのシーンに選ばれたのも頷ける。

◆隣国では竹島問題や教科書問題が吹き荒れているものと想像し、今回訪問するのは少し勇気が必要だったが、現地の状況は日本のマスコミの描像とはあまりに違っていた。いろいろな分野で人の交流をより活発にし、情報を共有することが今こそ必要なのだろう。都心と都心を結ぶ直行便の存在は素晴らしい。一層充実して欲しいものである。

◆今号は期せずして米国に関係する話題になった。一つは加々美氏による<米国海洋行動計画>の解説である。海洋問題は陸上問題に対応するくらいに広く多岐にわたる。したがって施策も自ずと各省庁でバラバラになりがちである。統合的な海の開発と管理、生態系の保全が必要な現在、省庁横断型の海洋政策委員会がどのようなリーダーシップを発揮するかは、同様の問題に悩むわが国にとっても参考になる。

◆ハーバード大学のケネディ行政大学院に留学中の(元)天気予報キャスターの小西氏には米国の地球環境意識についての現地レポートを頂いた。冷戦に勝利したことが逆に近視眼的な施策をとらせ、多様性を受け入れる度量を失わせているとすれば由々しい。

◆米国の海洋大気庁のレビタス氏にはかけがえのない海の歴史データを救済するためのGODARプロジェクトを紹介して頂いた。このような地味な仕事に国際リーダーシップを発揮する米国の研究者の存在に豊かな米国精神がまだ健在であることを知る。(了)

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