Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第112号(2005.04.05発行)

第112号(2005.04.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授)◆山形俊男

◆今号では海の波に関するオピニオンを特集した。
津波は恐ろしい海の波の代表であるが、海洋波に関する新進気鋭の専門家である早稲田氏にはこれとは別に大型船舶をも飲み込む巨大波浪<フリークウエーブ>を紹介いただいた。
その発生原因が次第に明らかになってきたこと、また決してフリーク(気まぐれ)なものではないことから、この恐ろしい巨大波浪を予測する技術の開発と船舶設計への反映が望まれている。
地球温暖化に伴い、台風は大型化し、北太平洋の波も高まっていることを忘れてならない。

◆海は温暖化気体である二酸化炭素の大きな吸収源である。
しかし吸収域と放出域は空間的にも時間的にも複雑に変動し、その実態はまだよく分っていない。
このような海と空の間の物質交換には砕ける波のプロセスが重要になる。
界面境界過程の分野で久しく世界をリードして来た鳥羽氏はリアルタイム・プラットフォームによる連続観測と衛星観測、モデル研究の融合の重要性を指摘する。

◆三番目のオピニオンは波の発生の研究で著名な光易氏によるものである。
氏は突発的に襲う海洋災害に対しては科学技術の進歩を絶えず取り入れた持続性のある研究と対策が重要であることを力説する。
スマトラ沖大地震による津波は30万人近い人命を瞬く間に奪い、多くのインフラを破壊した。
この悲劇を一過性のものとせず、経済性も考慮に入れた持続性のある対策が望まれる。

◆このところ日本海の波が高い。
こちらは政治と歴史の波である。シーボルトの古地図にも記載されているように竹島は江戸時代には松島と呼ばれていた。
当時、竹島と呼ばれていたのは鬱陵島(うつりょうとう)のことである。
現在の竹島については鳥取藩の漁師たちが江戸時代の初期から実効支配して来た記録がある。
しかし、島の名称の歴史的な混乱、明治政府の竹島編入宣言、戦後のGHQの対応、李ラインの設定が問題を錯綜させてしまった。
日本海に浮かぶ島々の歩んだ歴史を正しく知ることがまず重要である。
一方で、竹島問題が何故にこれほどまでにこじれるのかを双方の立場から冷静に理解する努力も必要であろう。
寺田寅彦の言葉にあるように天災は忘れた頃にやってくる。
しかし戦乱の記憶は忘れようにも忘れられないものなのである。(了)

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