Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第389号(2016.10.20発行)

海洋政策のさらなる発展への期待

[KEYWORDS]海洋政策学/海洋基本計画/情報公開
三菱総合研究所理事長、第9回海洋立国推進功労者表彰受賞◆小宮山 宏

日本海洋政策学会における海洋政策の発展と第2期海洋基本計画策定への貢献という2つの活動を評価いただき、海洋立国推進功労者表彰(海洋立国日本の推進に関する特別な功績分野)という名誉ある表彰を受けた。
これらの活動を振り返り、今後の海洋政策への期待を記したい。

はじめに

今年の8月24日、主に日本海洋政策学会における海洋政策の発展と第2期海洋基本計画策定への貢献という2つの活動を評価いただき、海洋立国推進功労者表彰(海洋立国日本の推進に関する特別な功績分野)という名誉ある表彰を受けました。これらの活動を振り返り、今後の海洋政策への期待を記したいと思います。

海洋政策学の確立に向けて

日本海洋政策研究会第1回年次大会での開会挨拶(2009年12月6日)

日本海洋政策学会※1は、2007年の海洋基本法制定を機に始まったわが国の海洋政策に係る取り組みにおいて、学術面で、その推進を支えるものでした。すなわち、従来の縦割りの学問分野にとらわれず、海洋に関わる方々が集まり、学際的かつ総合的な海洋政策学の確立・深化に資することを目指し、2008年に日本海洋政策研究会として発足しました。また、海洋の問題は本来的に国際的性格を有しており、国際的な交流や、海洋と人類との共生に貢献することも目的として、活動して参りました。
発足から3期6年間、会長の任を担いましたが、その間、2011年に日本海洋政策学会に名称変更、2013年には日本学術会議協力学術研究団体の指定を受けるなど、着実な発展を遂げました。現在、240名・28団体の会員を有するまでに発展しており、毎年12月に開催している年次大会は、活発な議論が行われ、海洋政策の学術成果発表の場として定着しています。その他、学会誌『日本海洋政策学会誌』の定期的な発行、海洋政策をめぐる諸問題に関してテーマを設定した課題研究の推進、「海の日」論文募集(共催:日本海事新聞社)、また海洋政策セミナーの開催など、精力的に活動が進められています。初代会長として海洋政策学の普及に貢献できたことを喜ばしく思っています。

第2期海洋基本計画の策定

次に第2期海洋基本計画の策定ですが、総合海洋政策本部参与会議の座長として、充分に議論を尽くすことを心がけました。そのため、当初の予定になかったPT(プロジェクトチーム)を設置し、「海洋産業の振興・創出」「海洋の安全の確保」「海洋情報の一元化と公開」「人材の育成」「海域の総合的管理と計画策定」といった重点施策について、幅広い分野の有識者の意見を踏まえた検討ができたと考えています。第2期海洋基本計画策定に係る経緯は表のとおりですが、PTの設置に際しては、座長の私的勉強会である参与勉強会の開催、超党派の国会議員と有識者で構成される海洋基本法戦略研究会と参与会議との意見交換等の機会が有効に機能しました。

海洋政策への期待

山本一太海洋政策担当大臣(当時)への、「総合海洋政策本部参与会議意見書」の手交(2014年5月22日)

第2期海洋基本計画策定のために設置したPTですが、策定後の2013年度も継続して議論を行い、山本一太海洋政策担当大臣(当時)へ2014年5月22日に海洋産業の振興・創出について人材育成も含めて積極的に提言する「総合海洋政策本部参与会議意見書」を手交するなど、その後の海洋基本計画の推進にも貢献しました。
PTでは、重点課題に加えて前回のニューズレター(第298号、2013年1月5日発行※2)で重要な課題として紹介した、法制度整備や海洋環境についても議論を行いました。残念ながら、排他的経済水域等に関する法制度については、PTでは十分な検討が出来ず、自由民主党が宇宙・海洋開発特別委員会のもとに設置したワーキングチームにおいて法整備に向けた検討が進められています。海洋基本計画の重点課題である「海域の総合的管理と計画策定」の推進に資する法制度になることを期待します。また、海洋環境については、今年度に「総合的な沿岸域の環境管理の在り方PT」が設置されており、沿岸域総合管理の制度化等に向けて検討が進むことを期待しています。
一方、前回のニューズレターで指摘した課題のなかでは、情報公開とフォローアップについては期待した成果が出ていないと考えています。情報公開については、海洋基本計画のハイパーリンク化等、政府側の努力が見られます。しかし、海洋に係る課題は非常に幅広く、それらをいっそう分かりやすく一般国民に公開していくことが望まれます。
また、フォローアップについては、内閣官房総合海洋政策本部事務局が中心となって、各施策について「工程表」を策定し、定期的な状況把握が行われています。この状況把握を一段階すすめ、「評価」をしていくことが課題と考えます。表に示した例に基づけば、既往計画の4年目、すなわち今年度から早くも第3期海洋基本計画の策定に向けた議論が始まると考えられます。2013年4月の策定から3年半が経過した第2期海洋基本計画の中間評価を早急に行い、その評価を踏まえた適切な改訂が行われることを強く期待しています。(了)

  1. ※1日本海洋政策学会http://oceanpolicy.jp/jsop/index.html
  2. ※2本誌298号「新たな海洋基本計画への期待」
    /opri-j/projects/information/newsletter/backnumber/2013/298_1.html

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