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オーシャンニューズレター

第298号(2013.01.05発行)

第298号(2013.01.05 発行)

新たな海洋基本計画への期待

[KEYWORDS] 海洋基本計画/参与会議意見/本部機能強化
総合海洋政策本部参与会議座長、(株)三菱総合研究所理事長◆小宮山 宏

総合海洋政策本部参与会議は、新たな海洋基本計画の策定に向けた提言を取りまとめ、2012年11月27日に本部長である野田佳彦総理に提出した。
海洋産業の創出・振興や環境保全、海洋の安全確保を特に重要な課題とし、実現のための基盤整備として、海洋情報の一元化・公開や人材育成、海洋の総合的管理等を提言している。
また、効果的な計画の遂行のために、PDCAサイクルに基づく意志決定の徹底に向けて、参与会議を中核にした総合海洋政策本部の機能強化についても提言した。

新たな海洋基本計画の重要課題について

東日本大震災後のエネルギー政策の再検討の動きや、わが国の海洋権益保全への関心の高まり等、わが国の海洋政策を巡る環境変化を踏まえ、新たな海洋基本計画は、海洋産業の創出・振興や海洋環境保全、海洋の安全確保を特に重要な課題とし、総合海洋政策本部参与会議において平成24年度末策定に向け検討をしています。また、これら政策実現のための基盤整備の観点から、海洋情報の一元化・公開、人材育成、海洋の総合的管理等を重要な政策課題とし、海洋立国日本のさらなる実現に向け取り組んでいます。

総合海洋政策本部の機能強化について

平成19年の海洋基本法制定を受けて平成20年に策定された現行海洋基本計画は、関係府省のタテ割りが目立ち、総合的な観点から評価を行うことが厳しいものでした。そのため、新たな海洋基本計画の検討では、各論に入る前にまず評価ができる仕組み作りが必要であるとの認識に至りました。その仕組みの中心は、PDCAサイクルのもとで重要施策を経常的に評価・提案するための総合海洋政策本部の機能強化です。今まで多くの同様の会議に関与した経験から、海洋基本法の枠内で実現可能な実効性のあるものとして、図のような仕組みを考えました。そして、2012年7月の参与会議にて、各担当参与が中心となる5つの専門プロジェクトチーム(以降、専門PT)を発足させ、機能強化を先取りした体制によって、新たな海洋基本計画の検討を開始しました。

参与会議専門PTの議論について

■2012年11月27日、総合政策研究本部参与会議は新たな海洋基本計画の策定に向けた提言を野田佳彦総理に提出した。

8~10月の3カ月間、担当参与が中心となった各専門PTでの議論を、関係省庁や専門家を交えて重点的に行いました。なかには手弁当にて20回を超える議論を行った専門PTもありました。そして、これらの熱心な議論を取りまとめた提言書※を11月27日に本部長である野田総理に提出しました。新たな海洋基本計画は、各専門PTの議論が十分に反映されたものになる予定です。以下に、各専門PTからの提言概要を簡単に紹介したいと思います。
海洋産業の創出と振興PT
湯原哲夫参与と河野博文参与、沖原隆宗参与、河野真理子参与が中心となったPTで、海洋エネルギー・鉱物資源開発や海洋再生可能エネルギー利用の海洋新産業と、海運・物流政策の戦略的な展開を提案しています。わが国海洋産業の強みを総合的に評価した、メリハリの利いた施策の計画的な遂行を期待しています。
海洋情報の一元化と公開PT
平 朝彦参与が中心となったPTで、海洋調査や海洋施策の状況や結果を公開し、容易に検索・利用できる仕組みの構築を提案しています。情報公開ルールの策定と多くの府省に分散した施策情報の一元化の二点が重要なポイントです。また、基本計画のハイパーテキスト化というわが国にとっては斬新な提案が特徴です。情報革命ともいうべき時代にふさわしい、原則は公開で、機密など必要によって制限を設けるという、これまでとは逆の情報公開ルールの策定を期待しています。

■図:総合海洋政策本部の機能強化の模式

人材育成PT
浦 環参与が中心となったPTで、初等・中等教育における海洋への理解の増進や、地域における産学官連携のネットワーク造りの促進を提案しています。大学が保有する臨海研究所等をネットワーク化して活用することなど、これまでにない展開を期待しています。
沿岸域の総合的管理と計画策定PT
磯部雅彦参与と山下東子参与が中心となったPTで、沿岸域を総合的に管理する地域スキームの構築を提案しています。洋上風力発電のような新たな沿岸域利用に対応したスキームの構築等、沖合も含めたわが国海域の総合的管理の推進を期待しています。
海洋の安全保障PT
古庄幸一参与が中心となったPTで、わが国の領海および排他的経済水域の保全を図るため、海上保安庁および海上自衛隊の体制強化・能力向上や連携強化、そのための国内法の整備を提案しています。非常に重要な課題であり、具体的な取り組みの進展を期待しています。
                          ●
以上のような提言概要の他、海洋環境保全や水産業の振興、法制度の整備等、上記の専門PTで対応できなかった課題についても検討をしています。今後、新たな海洋基本計画が、総合的な評価を基盤としたPDCAサイクルのもとで推進され、海洋立国日本の更なる実現の礎になることを期待しています。(了)

※ 総合海洋政策本部参与会議意見の手交について(2012年11月27日)  http://www.kantei.go.jp/jp/noda/actions/201211/27kaiyou.html
総合海洋政策本部参与会議意見の詳細  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/sanyo/sanyo_iken.html

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