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第365号(2015.10.20発行)

第365号(2015.10.20 発行)

パナマ運河~拡張完成と新しいビジネスチャンスの到来に向けて~

[KEYWORDS] パナマ運河/海上輸送/国際関係
駐日パナマ共和国特命全権大使◆Ritter DIAZ

パナマ運河は開通百周年を迎え、新しい時代の要望に応えるべく、より一層大型の船舶の通過を可能とする新閘門と運河拡張の工事が大詰めを迎えている。新運河の開通でLNG輸送が可能となる。
パナマは、日本やアジア諸国のエネルギー需要の一助となるよう海事サービス提供に努力する。


パナマ運河拡張工事いよいよ完了へ

■リッテル・ディアス 駐日パナマ共和国特命全権大使

■パナマ運河全体概要図

昨年、パナマ運河は開通百周年を迎えました。現在進行中のパナマ運河拡張工事の完了後には、一層大型の船舶の通過が可能となり、パナマ運河は新たな段階に入ります。
パナマ運河庁では今年6月、太平洋側および大西洋側の新閘門への注水試験を行い、7月にはスライド式ゲート開閉試験を開始しました。
閘門内に入った船舶は、従来、4台の牽引車によって引かれてきましたが、拡張工事完了後は、タグボートが曳航する方式となるため、水先人がネオパナマックスサイズの船舶を扱う訓練をまもなく開始します。
すでにパナマ運河庁より、工事は今年12月末までに完了し、2016年4月から全面通行を開始、同時に新たな通行料が適用されることが発表されています。新通航料に関してパナマ運河庁は、日本船主各社をはじめ関係各方面と協議の上、新しい通行料を決定しました。新通航料は、コンテナ船やドライバルクキャリアなど積荷の種類別に通行料を設定、さらにLNG船の往復割引や自動車専用運搬船の積載割合による料金の設定など、船種に応じたインセンティブを導入しています。また、パナマ運河庁では、海運業界も他業種同様にコストに敏感であること、他ルートとの競争も考えて、パナマ運河の通航料に頼らない歳入の道として、運河近郊にエネルギー生産拠点、燃料補給拠点、船舶の修繕拠点、コンテナターミナルやLNGターミナルなどを設置し新たなサービスの開発を進めています。
その一環として、パナマ運河庁では太平洋側のコロサル地区においてはコンテナターミナル建設のプロジェクトに取り組んでいます。実現すれば、年間約500万個のコンテナの取り扱いが可能となり、パナマが対応できるコンテナの数は年間1,100万個に増えることになります。さらに、新閘門の運用開始後は、相当数のLNG船の通航が予想されることから、パナマ運河庁は、米国貿易開発庁(USTDA)と提携し、LNG輸入基地建設のフィジビリティスタディを実施します。パナマ運河庁は、この調査をもとに、運河におけるLNG関連インフラ整備および天然ガス利用にかかわる戦略的優先事項を定め、事業計画を作っていくことになります。LNG基地の建設により通航量増大に対応した海事関連エネルギープロジェクトの実施が促進されるものと考えます。

 


■現在運用中のガツン閘門(提供:駐日パナマ共和国大使館)


■新閘門内への注水(提供:パナマ運河庁)


■来年4月に開通が予定されている新閘門イメージ(提供:パナマ運河庁)

 

新しい閘門開通への大きな期待

米国、中南米、カリブ海諸国では、ネオパナマックス船受け入れのために港の大水深化、コンテナヤードの拡張、クレーンの大型化などの港湾施設近代化が進められており、運河拡張による経済効果は、パナマ国内に留まりません。新閘門の開通で日本やアジア諸国のエネルギー需要に応えるべく、メキシコ湾から新閘門経由で日本やアジアへLNG輸送が可能となり、日本政府も新しい閘門の開通に大きな期待をしていることを感じています。
パナマ運河庁の政策が日本の経済に与える影響に鑑み、運河庁では日本の国土交通省と政策対話を行ってまいりました。また、日本の海運業界とパナマ運河庁は運河拡張に対して、特にパナマ運河の通航料体系に関して対話を行ってきました。
パナマ運河庁とパナマ国民は、日本によるわが国の海事サービスの利用に感謝しています。今後も日本の海運業界および関係省庁が求める高い水準のサービスを提供し続けるべく一層努力してまいります。(了)

● 駐日パナマ大使館HP http://www.embassyofpanamainjapan.org
● パナマ運河庁HP http://www.acp.gob.pa
● 本稿は英語で寄稿いただいた原文を翻訳・まとめたものです。原文は /opri/projects/information/newsletter/backnumber/2015/365_1.html でご覧頂けます。

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