ベトナムの高齢化対策を高齢者の社会参加と雇用の観点から議論

ハノイで第3回アジア・インパクト対話開催(開催日:2019年3月7日)

2019.04.10
第3回アジア・インパクト対話の参加者

 高齢化問題は、日本とアジアの共通課題の一つです。笹川平和財団(SPF)・アジアの人口動態事業グループでは、「アジアにおける少子高齢化事業」の一環として、アジア・インパクト対話(以下、AID)ワークショップを実施してきました。同テーマで3回目(最終)となる今回のワークショップは、国際NGOヘルプエイジインターナショナル・ベトナム (HelpAge International Vietnam)、ベトナム高齢者協会 (Vietnam Association of the Elderly) との共催のもと、2019年3月7日(木)、ベトナムのハノイにて開催されました。ワークショップには、ベトナム労働・傷病兵・社会問題省(Ministry of Labour-Invalids and Social Affairs)副大臣のグエン・ティ・ハ(Nguyen Thi Ha)氏をはじめ、同省や保健省の政策担当者、ベトナム国内で高齢化問題に取り組む実務家、後述のタイ、日本の専門家各1名など約50名が参加し、主に高齢者の社会参加と雇用の観点から、「アジアにおける高齢化社会への適応」について検討しました。

ジャン・タン・ロング准教授

 ワークショップは3部構成で、第1部ではベトナム国立経済大学 (Vietnam National Economics University) のジャン・タン・ロング (Giang Thanh Long) 准教授による基調講演が行われました。講演は、「アジアにおける人口高齢化―挑戦と機会」と題され、ベトナムを含む東南アジアおよび東アジア全体の高齢化に関する現状とその影響について、経済成長や人口移動、貧困、社会保障、健康、介護など、社会におけるさまざまな要因が関連付けられながら説明されました。発表によると、ベトナムは、65歳以上人口の割合が全体の7%から14%に移行するのに要する年数(=倍加年数)が15年と予測されており、他のアジア諸国に比べてもかなり速いスピードで人口高齢化が進むと予想されています。また、諸外国と比較し、ベトナムのGDPは低水準にあり、年金や介護保険などへの公的支出も低く、高齢者の主な収入源は、労働による所得です。身体能力の低下や疾患などのリスクを抱えながらも、高齢者の多くは家事や孫の世話、ボランティアなど所得が発生しない活動にも参加しており、こうした状況に、国や様々な市民団体がどのような対策を打ち出すのかが問われました。講演の結論部分でジャン准教授は、人口の高齢化が課題となるかチャンスとなるかは、各国がどのように対応するかによって異なると述べました。高齢化を一つの大きな「フロー」として捉え対策を考えることは、現在の高齢者だけでなく、未来の高齢者、つまり現在の若者について考えることでもあります。高齢化社会への対策を、国の開発政策として位置づけ、経済成長、雇用創出、ヘルスケア、教育など幅広い分野に取り組むとともに、社会や時代の変化に応じて考え続けなければならないとジャン准教授は主張し、発表を締めくくりました。
 この発表に対して第2部では、日本とタイからそれぞれ、特定非営利活動法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター理事長の小川全夫氏と、タイ高齢者協議会(Senior Citizen Council Thailand:以下SCCT)プログラムマネージャーのプラモット・アンモイ(Pramote Eua-amnuay)氏がコメントするとともに、自国の高齢化対策の取り組みを紹介しました。小川氏は、現在のベトナムやタイの人口構成はそれぞれ、日本の1970年と1995年のそれに類似していることを示し、「課題先進国」である日本の経験が参考になるのではないかと提起しました。そのうえで、今後の少子高齢化対策を考えるためには、フォーマル/インフォーマル、公営/民営、営利/非営利それぞれの領域で、コミュニティ、市場、政府という3つのアクターの連携の可能性を探ることが重要であると主張し、前回のAIDワークショップの開催地である福岡市における官民連携の事例を紹介しました。プロモット氏は、各地域(県、区、村など)の高齢者クラブが、タイにおける高齢者の健康促進、社会参加、所得創出、生涯学習を促進しているとして、各地の高齢者クラブを国全体として統率するSCCTの役割の重要性を説明しました。SCCTは地方政府や民間の活動団体、大学や研究機関などとも連携しており、タイ独自の官民連携の在り方が提示されました。
小川全夫氏

小川全夫氏

プラモット・アンモイ氏

プラモット・アンモイ氏

グループディスカッションの様子

グループディスカッションの様子

 続いて第3部では、高齢者の社会参加と、雇用・所得創出をテーマとしたグループ討議が行われ、それぞれのテーマについて課題と解決案を話し合いました。高齢者の社会参加のグループでは、高齢者自身・社会双方の意識喚起、ジェンダー間の社会活動への参加頻度や好む活動の違いを考慮した高齢者クラブの創出、環境・インフラの整備、マクロ政策、健康促進、家族・コミュニティ間のコミュニケーションの促進の必要性が議論されました。また、高齢者の雇用・所得創出のグループでは、企業やフォーマルセクター従事者の退職年齢の引き上げ、若者と高齢者のワークシェア、税制優遇などの企業へのインセンティブ付与、高齢者を対象とした職業紹介や職業訓練学校の創設、高齢者のローンやクレジットへのアクセスの実現、若者の巻き込み、家事労働・ケアワークの認識改善、DVや差別の対策が可能な解決策として挙げられました。グループ討議の結果は、各グループの代表者により参加者全員に共有されました。
 ベトナムでは2019年から2020年にかけて、高齢者に関する法制度や、少子高齢化対策のナショナルアクションプランの改定が予定されています。今回のワークショップでは、そうした今後の動きを見据え、政策担当者や実務家とともに次なる少子高齢化対策を考える機会を提供できたことが、大きな成果であったと考えます。また、このワークショップの内容はPhap Luat TVなど複数のメディアにも取り上げられ、ベトナム国内の少子高齢化問題への関心の高さが伺えました。
 当財団では、今後もアジアにおける少子高齢化にについて検討を進めて参ります。また、「アジア・インパクト対話」では重点テーマを「男女平等と女性のエンパワーメント」に代えて、引き続き対話を続けていきたいと考えています。
 
(アジアの人口動態事業グループ 植田晃博、横木那美、写真 山下優一)

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