ビジネスと人権リソースセンター
日本語ウェブサイトローンチ記念ウェビナー
笹川平和財団(東京都港区、角南理事長)とビジネスと人権リソースセンター(ロンドン、フィル・ブルーマー事務局長)は、11月4日(水)、Zoomオンライン上で「ビジネスと人権リソースセンター日本語ウェブサイトローンチ記念ウェビナー」を共催しました。ビジネスと人権リソースセンターが、当財団の支援を受けて新たに設置したビジネスと人権に関する日本語サイトに関する説明を行った他、10月に日本政府が公表した「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2015)(以下、NAPと略)を受けて、内外の専門家や企業関係者を招いてパネル・ディスカッションを行いました。
冒頭、当財団の安達一常務が開会挨拶を行い、ビジネスと人権リソースセンター、経済人コー円卓会議、そして当財団が昨年12月から共同で実施してきた情報発信プラットフォームの意義を説明し、発信のハブとなる日本語サイトが設置されたことを歓迎しました。そして、当財団が新たに「責任ある企業行動の促進」事業を立ち上げ、情報発信プラットフォームだけでなく、被害者の救済を目的としたグリーバンス・メカニズムの強化や、東南アジア地域における日本企業の人権リスクに関する調査などを行っていくことを明らかにしました。
本ウェビナーではまず、ビジネスと人権リソースセンター日本プログラムコーディネーターの佐藤暁子弁護士から、ビジネスと人権リソースセンター日本語ウェブサイトについて説明がありました。佐藤氏によれば、ビジネスと人権リソースセンターは、世界中の10,000を超える企業のポジティブ又はネガティブな影響に着目して活動している唯一の国際NGOであり、ビジネスと人権に関する世界最大のナレッジハブとして、9カ国語で最新かつ包括的なニュースを配信しています。また、企業活動に対する人権侵害の主張がされた記事、報告書などについて、ウェブサイトへの掲載前に当該企業に対して見解を求め、両者の主張を掲載することによって、透明性のある対話、それを通じた企業の取り組みの促進を目指しているとのことです。
続くパネル・ディスカッションでは、佐藤暁子氏、デンマーク人権研究所のダニエル・モリス氏、責任ある企業に関するミャンマーセンターのビッキー・バウマン氏、KnowTheChainのフェリシタス・ウェバー氏、味の素株式会社の中尾洋三氏が登壇し、それぞれ報告を行いました。佐藤氏はNAPの概要を説明した後、これまでの施策について実効性の評価がなく、引き続き実施すると述べているだけのものが多いことや、企業の人権尊重責任を政府として実現するための具体的な施策が少なく、「啓発」「周知」にとどまる点など、NAPの限界に関する指摘がありました。
続くダニエル・モリス氏は欧州におけるNAPの発展を概観した後、NAPは策定して終わりではなく、その後実施し、更に改善していくことが重要であると指摘しました。日本のNAPはようやく策定された段階であり、それが着実に実施されることをモニターする必要があるとのことです。バウマン氏は、ミャンマーにおけるビジネスと人権に関する日本企業が関連した具体的な事例として、丸紅とキリンを例に説明をされました。ミャンマーは軍部が直接企業活動も行っており、そこを避けてビジネスを行うことは簡単ではないが、不可能でもないと説明しました。
ウェバー氏は、日本の食品・飲料企業のサプライチェーンにおける強制労働に関するKnowTheChainレポートの概要を説明しました。KnowTheChainは、企業と投資家が国際的なサプライチェーンにおける強制労働のリスクについて理解し、対応するためのリソースを提供しています。このレポートでは、日本企業の本分野の取組が先進企業と比べて遅れていることが述べられています。最後に登壇した中尾氏は、ビジネスと人権に関する日本企業へのアンケート調査をもとに報告を行いました。この調査によれば、企業は人権相談窓口の設置など救済アクセスに関する取組みに積極的なように見えるが、それはこうしたメカニズムに関する無理解や誤解から生じているものであり、実際には救済に関する取組みを行っている企業は非常に少ないとのことです。
以上