第1グループ(戦略対話・交流促進担当)
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【開催報告】日本・トルコ外交樹立100周年記念シンポジウム「100年の友情から未来を考える」
公開日:2024.11.27
笹川平和財団ではトルコを重点活動国の一つに位置付け、トルコと日本の人的・知的交流を通じて二国間関係の強化に取り組んでまいりました。
日本・トルコ外交関係樹立100周年を迎えた今年、トルコ外務省戦略研究センター(SAM)との共催により、記念シンポジウム「100年の友情から未来を考える」を2024年11月7日(木)に当財団国際会議場にて開催しました。対面のみの開催でしたが、80名に上る参加者を迎え、長きに亘り両国の間で活躍されてきた研究者3名と、未来の二国間関係を担う若手研究者2名をお招きし、両国の歴史や社会、今後の展望について意見を共有する場となりました。
日本・トルコ外交関係樹立100周年を迎えた今年、トルコ外務省戦略研究センター(SAM)との共催により、記念シンポジウム「100年の友情から未来を考える」を2024年11月7日(木)に当財団国際会議場にて開催しました。対面のみの開催でしたが、80名に上る参加者を迎え、長きに亘り両国の間で活躍されてきた研究者3名と、未来の二国間関係を担う若手研究者2名をお招きし、両国の歴史や社会、今後の展望について意見を共有する場となりました。
開会挨拶 角南篤(笹川平和財団 理事長)

角南篤
日本とトルコの外交関係樹立100周年という歴史的な節目を迎えたことに心からの祝意を表し、国際情勢の不安定化が進む中、「平和な社会の構築に向けた協力関係をどう発展させていくべきか」を共に考える機会にしたいと話し、最後にコルクット・ギュンゲン駐日トルコ大使をはじめ登壇者への謝辞を述べました。
来賓挨拶 コルクット・ギュンゲン氏(駐日トルコ大使)

コルクット・ギュンゲン氏
これまでトルコと日本が経験してきた両国の関係深化に資する象徴的な出来事を紹介し、100年にわたる友好関係構築の功績を称えました。また、2013年に両国の外交関係が戦略的パートナーシップに格上げされてから10周年となることに言及し、今後益々の二国間関係の強化に対する意欲と期待を述べました。
【第1部】特別講演

林佳世子氏
「オスマン帝国からトルコ共和国へ」 林佳世子氏(東京外国語大学 学長)
オスマン帝国の歴史を紐解き、現在のトルコ共和国に至るまでの詳細な経緯を説明しました。歴代スルタンの活躍で国土が拡大した前期、産業の発展や徴税制度の導入により統治が安定した中期、そして帝国の中央集権化とその後の民族主義に基づく国民国家形成へと移行した後期と、オスマン帝国500年の歴史の時代区分を示しました。その上で、オスマン帝国の崩壊後、帝国からその人材や軍事、行政、司法、教育システムの大部分を継承した国々がトルコ共和国以外にもあるが、それらの国々においては、民族主義の興りなどの背景により、近現代史の中でオスマン帝国との連続性が十分に触れられていないことを指摘しました。最後に、「オスマン帝国の遺産、あるいは末裔とは何なのか、改めて検証されるべき課題ではないか」と提起しました。
【第2部】基調講演

アリ・メルトハン・デュンダル氏
「プラトニックな愛から合理的な結婚へ―21世紀のトルコと日本の関係についての考察」 アリ・メルトハン・デュンダル氏 (アンカラ大学アジア太平洋研究センター 所長)
現在に至るトルコと日本の友好関係構築の礎となった出来事を振り返るとともに、今後の関係深化に向けた協力の必要性を訴えました。トルコ人と日本人の初対面は、1924年の外交関係樹立以前の1860年代に岩倉使節団が当時オスマン帝国領であったのエジプトを訪れた際にあるとの見解を示しました。その後両国間関係が深化した契機として、トルコ軍艦エルトゥールル号の遭難事故、ロシア革命後のトルコ系タタール人やバシュキール人の日本移住、イラン・イラク戦争時下のトルコ政府による日本人救出、2011年の東日本大震災や2023年のトルコ・シリア大地震での相互の人道支援活動などの事例を紹介しました。他方で、経済面においては、両国間の貿易が不均衡な状況にあることを指摘した上で、将来的なエネルギー分野における共同事業や軍事分野における共同開発、投資など、両国の繁栄に貢献し合うことの必要性を強調しました。最後に、トルコと日本の強固な絆は、世界の平和と繁栄に大きく寄与するだろうと期待を込めました。

三沢伸生氏
「21世紀のトルコと日本」 三沢伸生氏(東洋大学 教授)
戦間期の1924年に締結されたローザンヌ条約に基づく国交樹立以降に焦点を当て、現在に至るまでの両国の外交関係の変遷を紹介しました。特に日本の高度経済成長期にあたる1970年代には、トルコの大阪万博への参画や経団連使節団によるトルコ訪問を通じて日本のトルコに対する経済的関心が高まりをみせ、トルコへの大規模な円借款供与に繋がったこと、そして1980~2000年代にはトルコのオザル政権がヨーロッパ、アメリカに次いで日本をトルコの外交政策における第三の重点国として位置づけたことを契機に、その後もチルレル政権、安倍政権下でトルコへの技術協力が促進された経緯を説明しました。さらにトルコの東アジア諸国との貿易に関しては、中国、韓国からの輸入が多くを占めている割にトルコから両国への輸出量が少ないため、トルコ国内でも輸出入量を平等にすべきだとの意見が出ていることに言及し、21世紀における日本とトルコの関係発展のためには、「単に日本からトルコへの輸出を増やすだけではなく、トルコから日本への輸出も増やすことで両国が互いにWin-Winとなる経済協力を進めていく必要がある」と訴えました。
【第3部】日本・トルコ両国の若手研究者による研究発表

今城尚彦氏
「異なるものが出会うフィールドワーク:日本からトルコへ」 今城尚彦氏 (東京外国語大学大学院 博士後期課程)
文化人類学を専門とする今城氏は、トルコの民謡を通じて出会ったイスラーム神秘主義を信棒するアレヴィーの人々に関心を持ち、その聖地とされるハジュベクタシュ村に14か月間滞在しながら彼らの生活や信仰に関する調査研究に取り組みました。同氏は、調査者としてフィールドワークを実施する上で、調査活動が自身の研究のための情報収集にとどまることなく現地社会への還元に寄与すること、さらには現地の人々の声や視点を尊重しながら外部者の視点でその土地を語ることを意識していると述べました。外部者として、現地社会へ影響を与えた原体験として、同氏が年に一度の祭典が催され賑わいを見せる夏の間だけでなく、14か月現地に滞在することによって「年間を通じてハジュベクタシュに滞在する外国人」として地元住人から奇異の目で見られたことを挙げました。地元住人にとっては何の変哲もない土地に対して特別な関心を寄せる同氏の行動に対する疑問によって、彼ら自身が自分たちの土地の文化や生き方を再考し、その価値を再認識する契機となったことを話しました。

ギョクベルク・ドゥルマズ氏
「21世紀のトルコと日本の関係における重要な基盤としての人材」 ギョクベルク・ドゥルマズ氏 (アンカラ大学 講師)
筑波大学において、国際的な競争環境下で活躍しうる有能な労働力の獲得に向けた日本の取り組みについて研究した経験に触れた上で、トルコと日本のさらなる関係強化に向けた最も重要な視点として、昨今の科学技術の進展を牽引する優秀な人材の獲得と、その人的資源の効果的な活用を挙げました。具体的には、持続可能な生産と消費、気候変動、産業分野における技術移転など、現代の国際的課題の解決に資する専門家の育成の必要性を強調しました。この他、両国の大学間における交換留学プログラムや共同研究活動を通じた、トルコと日本の研究人材の交流と知見共有の促進を提案しました。
*第3部の発表は、中東地域を専門とする若手研究者の育成に寄与することを目的として、当財団が開催している「現代中東若手研究会」の一環として実施しました。発表者2名の発表資料については、現代中東若手研究会の報告をご覧ください。
閉会挨拶 安達一(笹川平和財団 常務理事)

安達一
日本とトルコの外交樹立から100年にわたる友好の歴史を振り返り、両国の関係がいかに強固であるかを再認識するとともに、今後さらに関係が発展することを目指し、当財団におけるトルコ関連事業のさらなる強化への意気込みを語りました。併せて、在京トルコ大使館、共催のトルコ外務省戦略研究センターをはじめとする登壇者、ならびに参加者の皆様への謝意を表しました。
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お問い合わせ先
笹川平和財団 第1グループ(戦略対話・交流促進担当)
担当者:水谷・木村
E-mail:asia-middleeast@spf.or.jp
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