第1グループ(戦略対話・交流促進担当)
第1グループ(戦略対話・交流促進担当)
シンポジウム「未来への対話‐デジタルエイジングとアクティブエイジング」共催
日韓タイの共通課題である少子高齢化について未来志向で議論(開催日:2019年3月11日)
2019.04.10
8分

アジアの人口動態事業グループでは、少子高齢化の課題先進国である日本の経験と教訓を参考に、今後アジア各国が高齢社会を迎えるにあたって想定される課題に対して具体的な解決策を提示することを目指しています。
今回、国際交流基金バンコク日本文化センターにご提唱いただいた「タイと日本および韓国の専門家や実務家が共通課題である高齢化社会対策について対話し、より良い未来を創るためのアプローチについて考える」というシンポジウムの趣旨に賛同し、3月11日(金)バンコクにて、『未来への対話―デジタルエイジングとアクティブエイジング』シンポジウムを国際交流基金バンコク日本文化センター、タイ・ヘルス・プロモーション・ファンデーション、Young Happyと共催しました。 シンポジウムは3部構成からなり、第1部は日本と韓国の高齢化対策と教訓について、第2部はデジタルディバイスを活用して高齢者も含む幅広い年齢層にサービスを提供するスタートアップ企業の事業展開について、第3部は高齢者のネガティブイメージを変える取り組みについて、各分野の専門家や実務家が対話をしました。
今回、国際交流基金バンコク日本文化センターにご提唱いただいた「タイと日本および韓国の専門家や実務家が共通課題である高齢化社会対策について対話し、より良い未来を創るためのアプローチについて考える」というシンポジウムの趣旨に賛同し、3月11日(金)バンコクにて、『未来への対話―デジタルエイジングとアクティブエイジング』シンポジウムを国際交流基金バンコク日本文化センター、タイ・ヘルス・プロモーション・ファンデーション、Young Happyと共催しました。 シンポジウムは3部構成からなり、第1部は日本と韓国の高齢化対策と教訓について、第2部はデジタルディバイスを活用して高齢者も含む幅広い年齢層にサービスを提供するスタートアップ企業の事業展開について、第3部は高齢者のネガティブイメージを変える取り組みについて、各分野の専門家や実務家が対話をしました。

シンポジウム会場の様子
第1部では、日本総合研究所の大泉啓一郎上席主任研究員(現 亜細亜大学アジア研究所教授)と東京大学大学院の金成垣准教授が講演しました。日本の高福祉・高財政負担・借金大国の現状や、韓国が盲目的に日本型社会保障を導入した経緯、低福祉・低財政負担の状況におかれた高齢者の現状、高齢者の高い貧困率などが説明されました。その上で、タイが高齢社会を迎えるにあたって描く社会の未来像について問題提起がなされ、特に家族像の描き方が対策に大きな影響を及ぼすことに注意が喚起されました。また、タイでは「タイムバンキング」(労働時間を貯蓄し、必要な時に労働の形で対価を受け取る仕組み)への関心が強まっていることから、日本におけるクラウドを利用したビジネス形態のタイムバンキングと、韓国における福祉館・商店・貧困世帯の三者が互いにサービスを提供し合う「美しき隣人」事業が紹介されました。

大泉啓一郎上席主任研究員(現 亜細亜大学アジア研究所教授)

金成垣准教授
第2部では、タイで事業を展開しているスタートアップ企業のYoung Happyの創始者であるThanakorn Phromyos氏とTalentExの越陽二郎氏が対話し、デジタル技術を用いた多世代間交流や年齢を問わない起業・労働の実践例を紹介しました。実際に、シンポジウム出席者約200名のうちの過半数以上がYoung Happyの会員であったことからもわかるように、その盛況さは一目瞭然でした。「Young Happyの活動に参加した場合にはスマートフォンを介してポイントを贈呈する」といった高齢者の社会参加を促進するための仕組みもあり、その活動の斬新さが印象的でした。また越氏はバンコク、日本、ロシアを拠点にウェブでの人材派遣事業を運営しています。事業自体は、高齢者を対象としているわけではありません。しかし、その活動は興味深く、主に青年が参加する起業家支援事業に、下駄の鼻緒を作る工芸技術者である女性高齢者が参加し、その起業を支援した経験などをお話されました。

Thanakorn Phromyos氏(中央)と越陽二郎氏(右)との対話の様子
第3部はタイの70代の女優であるPatravadi Mejudhon氏とテレビ制作会社Boon Me Rit社のPrasarn Ingkanan社長により、高齢者のネガティブイメージを変える取り組みが紹介されました。Patravadi Mejudhon氏は舞台芸術を教育に生かした全寮制の学校パトラワディー・ホアヒン・スクールを創立するなど子どもの教育に精力的に携わっており、また文化・芸術活動を介してストリートチルドレンの抱える問題に向き合っています。彼女は会場に集まった出席者に語り掛けるように、子どもと接するときに優しい態度をとることの重要性や、子どもとの対話を通して自分の人生を変えることができる楽しさを伝えていました。Prasarn Ingkanan氏は、女性高齢者が若者と一緒にセパタクローを楽しんだり、伝統的な歌をラップ調に変え、子供たちに伝えたり、また、化粧や若者の服装で着飾り写真を撮影する様子などをテレビやウェブに動画配信しています。それらは明るく躍動感に溢れ、会場が笑顔で満たされました。
意見交換会(Networking Dialogue)
同日午後には、高齢者対策に携わる省庁管轄団体、大学、調査機関、高齢者委員会・団体、NGOなどの10団体が集まる意見交換会が開催され、各団体の事業紹介と今後の活動予定が共有されました。様々な意見が述べられるなか、タイでは、高齢者に関する取り組みが政策となって確立される一方、その実施は十分ではないとの見解も示されました。また、市民団体を含む様々な組織が長年活動を行っているものの、その連携体制は構築されていないようで、この意見交換会がプラットフォーム作りのきっかけとなることが期待されました。意見交換会のまとめとして、大泉氏、金氏、岡本富美子アジア人口動態事業グループ長が中心となり、欧米型福祉国家モデルを用いて少子高齢化対策を講じることは現状に適しているとは言えず、地域社会のつながりが残る東南アジアから学び合い、アジアの特徴を活かした新しい枠組みをみんなで築いていこうと呼びかけました。

意見交換会の様子