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日米・安全保障研究ユニット SPF China Observer

「聯合利剣2024A」演習にみる中国の台湾周辺軍事活動の三つのトレンド

―(その1)台湾周辺での軍事活動の常態化―

杉浦 康之(防衛省防衛研究所 地域研究部中国研究室主任研究官)


2024.08.20
8分

はじめに

 2024年5月23日、中国人民解放軍東部戦区は同日と翌日の2日間、「聯合利剣2024A」と称する軍事演習を台湾周辺で実施することを発表した。東部戦区報道官は、今回の演習には東部戦区所属の陸・海・空・ロケットの4軍種が参加し、その重点は統合海・空戦備パトロール、包括的な戦場統制権の統合的奪取、重要目標に対する統合精密打撃などであり、艦艇・作戦機が台湾周辺に接近して戦備パトロールを行い、台湾列島内外で一体となった統合行動を行うことで、戦区統合作戦能力を検証すると説明した。その上で東部戦区報道官は、演習の目的として、「台湾独立」を目論む分裂勢力への懲罰と干渉と挑発を行う外部勢力への警告だと主張し[1]、中華民国(台湾)総統に就任したばかりの頼清徳政権及び台湾との安全保障協力の強化を促進している米国への牽制を図った。

 中国にとって蔡英文政権を踏襲しつつも、より台湾独立色が濃いと認識されている頼清徳政権の誕生は好ましいものはなく、王毅外交部長を始めとする政府関係者は発足直後から頼清徳政権への批判を展開していた[2]。今回の演習の実施もそうした流れの一環であると思われる。但し、後述の通り、演習をめぐる中国人民解放軍の宣伝活動が用意周到だったことを考えれば、今回の演習は、頼清徳総統の就任演説の内容の如何に関わらず、予め準備していたものが実施されたと考えるべきであろう。

 「聯合利剣2024A」に関しては、既に国内外で幾つかの先行研究が発表されている[3]。これらの研究は演習の政策目的や演習内容の動態分析を主眼にしている。本稿の目的は、それらの先行研究の成果を踏まえつつ、中国人民解放軍機関紙『解放軍報』の記事や人民日報系メディア『環球時報』での中国人民解放軍研究者の発言、香港メディアの報道、中国人民解放軍の各種教範などの分析を通じて、一連の演習内容を背後にある中国人民解放軍の作戦構想・部隊運用方針、及び中国人民解放軍と海警の連携度合いの深化などを解明することにある。

 また本稿は分析に際して、近年の中国人民解放軍の台湾周辺での軍事活動の特徴である、常態化・実戦化・宣伝化の三点を着目する。こうした特徴は、2023年4月、蔡英文・台湾総統(当時)が米国に立ち寄り、ケビン・マッカーシー米国下院議長(当時)と会談したことに反発して実施した「聯合利剣」以降、確認し得るものである[4]。

1.台湾周辺での軍事活動の常態化

 「聯合利剣」が終了した後、中国空軍は台湾海峡の中間線を超えるパトロールや軍事演習を繰り返し実施した。こうした空軍の活動と呼応するように、中国海軍の艦艇も台湾周辺に展開するようになった。かかる台湾周辺での軍事活動に参加する中国人民解放軍の作戦機、艦艇の数も増加している[5]。2023年7月、東部戦区を訪問した習近平はこうした人民解放軍の台湾周辺での軍事活動を肯定的に評価した[6]。その後、頼清徳・台湾副総統(当時)が米国に立ち寄った際にも、中国人民解放軍は小規模ながら台湾での演習を行った[7]。

 こうしたなかで中国人民解放軍が今回の演習を「聯合利剣2024A」と命名したことは注目に値する。中国人民解放軍はかつて「聯合行動」と命名した統合作戦演習にAからEまでの番号を与え、各軍区が断続的に演習を繰り返した[8]。今回中国人民解放軍が演習名を「聯合利剣2024A」としたことにより、今後B、Cといった演習が実施される可能性を囁かれており、『環球時報』もその可能性を示唆している[9]。昨年以来、中国人民解放軍の台湾周辺での軍事活動において常態化の傾向が顕著であったが、今後こうした趨勢は強化されることこそあれ、緩和されることは当面ないものと思われる。

 実際、演習終了後も中国人民解放軍は台湾周辺で積極的な軍事活動を展開している。例えば、2024年6月、台湾国防部は中国人民解放軍がヘリコプターを含む23機の航空機と7隻の艦艇を台湾周辺に派遣したと発表した。専門家はこの発表に基づき、中国人民解放軍が台湾周辺で対潜訓練を実施した可能性があると分析している[10]。

 2024年7月、中国人民解放軍空軍は作戦機56機を台湾海峡における中台中間線を越えて派遣し、空母「山東」を中心とする中国海軍の艦隊と演習を行った。台湾側の発表によれば、一日で中間線を越えた作戦機の数としては過去最多であった[11]。

 このように、中国人民解放軍は「聯合利剣2024A」が終了したのちも台湾周辺での軍事活動を継続しており、その常態化の傾向は益々顕著になっている。

[1] 『解放軍報』2024年5月24日。

[2] 『解放軍報』2024年5月22日、5月23日。

[3] CSIS, “How Is China Responding to the Inauguration of Taiwan’s President William Lai?”, 飯田将史「台湾を囲む中国による軍事演習 ― その特徴、狙いと今後の展望」『NIDSコメンタリー』第325号(2024年5月)。千綿るり子「中国軍東部戦区の対台湾演習「聯合利剣-2024A」-海警船の参加状況を中心に」『JASIリサーチメモ』(2024年6月)。

[4] Sugiura Yasuyuki, “Three trends in the PLA's military activities around Taiwan”.

[5] Sugiura Yasuyuki, “Three trends in the PLA's military activities around Taiwan”.

[6] 『解放軍報』2023年7月7日。

[7] 『解放軍報』2023年8月20日。

[8] 防衛省防衛研究所編『東アジア戦略概観2015』(防衛省防衛研究所 2015年)、111頁。同『東アジア戦略概観2016』(防衛省防衛研究所 2016年)、121-122頁。

[9] Global Times(以下、GT)、May 24, 2024.

[10] South China Morning Post(以下SCMP), Jun 26, 2024.

[11] SCMP, July 12, 2024.


論考(中国・台湾) 日米・安全保障研究ユニット
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