安全保障の文脈で「情報戦」「認知領域の戦い」という言葉に注目が集まっています。その背景に、ディスインフォメーションを用いた情報操作型サイバー攻撃によって、外国勢力が広範な影響工作を行う事案が諸外国で観測されていることがあります。このようなサイバー攻撃は、国家の意思決定を歪めるだけでなく、選挙結果に影響を与え、民主主義社会を危機に陥らせかねない重大な安全保障上の脅威ととらえられるようになってきています。
安全保障研究グループ「日本のサイバー安全保障の確保Ⅱ」事業では、2019年よりディスインフォメーションなどの情報操作型サイバー攻撃の事例分析と対策の検討を行い、「"外国からのディスインフォメーションに備えを!~サイバー空間の情報操作の脅威~"」と題する報告書を2022年に公表しました。この検討の議論の中で、日本が位置するインド太平洋地域に焦点をあてた事例研究の必要性が指摘され、同地域に特化した「インド太平洋地域の偽情報研究会」を2021年度に立ち上げ、調査や分析を進めてきました。
同研究会における議論では、インド太平洋地域各国におけるディスインフォメーション対策は、外国からの情報操作型サイバー攻撃や影響工作に対抗する側面があるだけではなく、権威主義体制や社会主義体制の擁護、国内体制の強化という傾向を有していることが明らかになりました。これは、我が国でディスインフォメーション対策の強化を進めていくうえで、いかにして民主主義体制の擁護を両立させるかという課題を浮き彫りにするものであると言えます。
今般、こうした研究会における議論や事例調査をとりまとめた最終報告書を作成いたしました。本報告書が、インド太平洋地域、中でも特に日本周辺地域の情勢への理解を深め、我が国のディスインフォメーション対策を検討する一助となれば幸いです。
※最終報告書本文は
こちらをご覧ください。