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平和構築支援グループ

パルから太平洋へ:第41回パシフィック・リム障害者国際会議(PacRim 2026)への参加報告

2026.07.16
8分

2026年5月、笹川平和財団(SPF)は、ハワイ大学マノア校で開催された第41回パシフィック・リム障害者国際会議(Pacific Rim International Conference on Disability)に参加した。同会議には、米国、太平洋地域、アジア各国から研究者、実務家、政策立案者、市民社会関係者が集い、レジリエンス(回復力)、インクルージョン(包摂)、コミュニティ主導の開発に関する多角的な議論が行われた。

本会議は、当財団がインドネシア・中部スラウェシ州で取り組む事業を、障害インクルーシブ開発や社会的結束に関する国際的な議論の中に位置づける重要な機会となった。

パル事業の発信

会議期間中、当財団を代表してディッサ・シャキナ・アーダニサ研究員が2つのセッションで発表を行った。1つは大学発達障害研究センター(UCEDD)プレカンファレンス(10分間)、もう1つは本会議プログラム(25分間)である。いずれのセッションでも、中部スラウェシ州パルにおいて、現地のろう者コミュニティ、市民社会組織、地方政府との協働により、ろう者に配慮した起業支援ツールを共同開発する取り組みを紹介した。

本事業は、ろう者コミュニティをはじめ、パル市政府、INBIS Palu(行政主導のビジネスインキュベーター)、Sikola Mombine、Kopernikといった現地パートナーとの共創によって進められている。会場では、特にそのプロセス重視のアプローチに大きな関心が寄せられた。議論は成果だけにとどまらず、パートナーシップの構築方法、データ不足などの制約への対応、さらには「パル宣言」の採択やインクルーシブ・タスクフォースの設置といった地域の政策形成への貢献にまで及んだ。

なお、両セッションで発表を行った国際的な財団は当財団のみであり、グローバル・サウスの実践者としての視点を提供する貴重な機会となった。

主な知見

「ラストマイル」の課題を埋める

会議を通じて繰り返し取り上げられたテーマの一つが、政策の枠組みと人々の暮らしの現実との間に存在するギャップである。障害者のインクルージョンに関する法的枠組みが整備されていても、その実施は依然として不十分な場合が多い。政策を日常の生活に届ける「ラストマイル」の課題は、国や地域を超えた共通の問題として認識されている。

この知見は、当財団の平和構築支援事業が重視する、実施に焦点を当てた文脈に即したアプローチの重要性を改めて裏づけるものである。

地域固有の価値観を基盤としたインクルージョン

会議では、地域に根ざした価値観がインクルーシブな開発の基盤となることが繰り返し強調された。ハワイでは、「アロハ・アーイナ(aloha ʻāina)」や「クレアナ(kuleana)」といった概念が、責任と相互依存の精神を体現している。

これらは、中部スラウェシの「ノサララ・ノサバトゥトゥ(nosarara nosabatutu)」——団結と連帯を意味する理念——と深く共鳴する。こうした共通点は、インクルーシブな取り組みを地域の価値体系に根づかせることの重要性を示しており、地域の価値観を補足的な参照にとどめず、取り組みの指針として位置づけるべきことを示唆している。
 

経済参加と社会的結束

障害者の雇用や起業に関連して、経済的インクルージョンも中心的なテーマとなった。経済活動への参加は、尊厳や主体性、社会的なつながりを強化するうえで不可欠な役割を果たすことが確認された。

パルのような災害後の文脈においては、経済的エンパワーメントは復興プロセスやコミュニティの結束の再構築と密接に結びついている。

知見の拡大とパートナーシップの構築

本会議への参加を通じて、当事者中心の防災計画、企業との連携、インクルーシブ・デザインなど、当財団の事業に活用しうる実践的なツールやアプローチを把握することができた。

また、ハワイ大学のネットワークを中心に、学術機関や実務家との関係構築も進み、今後の協働や比較研究に向けた新たな可能性が開かれた。

ハワイという結節点

米国、太平洋、アジアの交差点に位置するハワイの地理的特性は、会議に集った多様な視点にも反映されていた。この立地は、地域横断的な交流を深めるうえで大きな利点となる。

とりわけ障害者のインクルージョンは、ハワイ、日本、東南アジアに共通する重要課題であり、防災、インクルーシブな経済開発、コミュニティのレジリエンスといったテーマでの協働の可能性が広がっている。

今後の展望

本会議は、共創、地域の価値観の統合、制度との連携を重視する当財団のアプローチの妥当性を改めて確認する場となった。

同時に、共同設計の段階からさらに進み、コミュニティ自身による主体的な運営へと移行していくことの重要性も浮き彫りとなった。この移行をいかに実現するかは、当財団の今後の事業展開における重要な検討課題である。

おわりに

第41回パシフィック・リム障害者国際会議は、障害インクルーシブ開発に対する当財団のアプローチを振り返り、さらに発展させる貴重な機会となった。パルでの現地の取り組みを、インクルージョンとレジリエンスに関するグローバルな議論と結びつけることで、文脈に即したコミュニティ主導の解決策の重要性が改めて確認された。

今回得られた知見は、インドネシアをはじめとする地域における、インクルーシブな経済開発と平和構築の推進に向けた当財団の取り組みに活かしていく。
 
 

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