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平和構築支援グループ

バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)における女性・子ども保護のための医療・社会的基盤整備事業

2026.04.21
18分

背景

フィリピンでは、女性および子どもに対する暴力が依然として深刻な社会問題となっており、国家レベルでの対策強化が強く求められています。 2022年に全国規模で実施された National Baseline Study on Violence Against Children によれば、調査対象者である13~24歳の若者の80%が何らかの暴力を経験し、そのうち22.4%は性暴力の被害者であることが明らかになっています。 また、被害経験があっても公的機関に相談した若者は10%未満にとどまり、多くのケースが潜在化していると指摘されています [1]。 警察の統計でも深刻な状況が示されており、2023年には18,756件の子どもへの暴力事案が警察に報告され、その内訳として7,933件が児童虐待、7,262件がレイプ事案とされています。 被害規模は極めて高水準であり、警察当局は状況が改善しているとは言い難いとの認識を示しています [2]。 また、女性への暴力も深刻であり、フィリピン統計庁の2022年人口・健康調査によれば、女性の18%が生涯においてパートナーから身体的または性的暴力を受けた経験を持つとしています [3]。

これらのデータは、子どもや女性に対する暴力(性暴力含む)が社会全体に広く浸透していることを示すとともに、多くの被害が十分に可視化されておらず、また被害者に対する十分な支援がいきわたっていない構造的課題の一例を示しており、包括的な保護体制の強化が不可欠だと言われています。 こうした状況に対応するため、フィリピン政府は、フィリピン政府保健省 Administrative Order 2013‑0011 (Revised Policy on the Establishment of Women and Their Children Protection Units in All Government Hospitals)により、 全ての公立病院内に Women and Children Protection Unit(WCPU:女性及び子どもの保護ユニット)を設置する事を定め、 2026年3月時点で、フィリピン全土に101か所のWCPUが設置され、計約200,000人が支援を受けてきました。 女性及び子どもの保護ユニット(WCPU)は、虐待を受けた女性や子どもが医療・心理・社会・法的支援を一体的に受けられる病院内の専門拠点で、 Child Protection Network Foundation, Inc.がフィリピン政府他関係機関と協働して全国に整備してきたものです。 医師・看護師・ソーシャルワーカー・警察官など多職種で編成されるチームが協力し、 被害者を中心に据えた再トラウマ化を避ける共通プロトコールに沿って各ケースに対応しています。

しかし、長年の武力紛争により治安不安と行政機能の脆弱化が続いてきたバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)では、 WCPUの整備が他地域に比べて大幅に遅れています。 背景には、和平合意後も氏族間抗争(リド)等の影響で治安が不安定となり、 女性や子どもの権利侵害が続いていたこと、さらにフィリピンで最も高い貧困率に象徴される財政基盤の脆弱性、 医療・教育インフラの不足が制度整備を困難にしてきたこと等があげられます。 また、2019年に発足したバンサモロ自治政府は行政・法制度の基盤整備に時間を要し、 政治的混乱や選挙延期も政策遂行を遅らせています。 加えて、フィリピンで最も低い識字率の低さが示すように、 教育水準の課題から専門人材の確保が難しい上、 家族の名誉や沈黙を重んじる文化的背景によりジェンダーに基づく暴力の報告は実際よりも過少となり、 政策優先度も上がりにくかったと指摘されています。
 
[1] Ramiro, L. S., Madrid, B. J., Norton‑Staal, S., Cajayon‑Uy, M. M., & Luna, P. B. (2022). “National Baseline Study on Violence against Children and Youth (NBS‑VAC) in the Philippines.” Acta Medica Philippina. https://actamedicaphilippina.upm.edu.ph/index.php/acta/article/view/5062
 
[2] Panoringan, H. (2024, October 25). “Over 18,000 child violence cases in the Philippines in 2023.” Smart Parenting. https://www.smartparenting.com.ph/life/news/pnp-18k-child-violence-cases-2023-a6837-20241025

[3] Philippine Statistics Authority (PSA), & ICF. (2023). “Philippines Demographic and Health Survey 2022: Key Indicators Report (PR146).” DHS Program. https://www.dhsprogram.com/pubs/pdf/PR146/PR146.pdf

女性及び子どもの保護ユニット(WCPU)の重要性

女性及び子どもの保護ユニット(WCPU)が採用するアプローチは、医療・心理・福祉・司法を統合する多職種協働モデルに特徴づけられます。虐待などの暴力は単なる医療問題ではなく、福祉支援や司法手続と密接に関連するため、WCPUは、診察、心理ケア、福祉、警察・司法等との連携を一体的に提供します。このWCPUの仕組みは、被害者の負担を軽減し、再トラウマ化を防ぐ上で極めて有効であると高く評価されています。1999年には警察との協定により警察官のWCPU参画が制度化され、またフィリピン弁護士会との連携によって法的支援の強化も進められています。

また、WCPUは公衆衛生と政策を結びつける国家的枠組みとして、社会的インパクトの観点でも重要な役割を果たしています。フィリピン全土のWCPUで収集されるデータは包括データベースにて一元管理されており、性的同意年齢の引き上げ(12歳→16歳)などの法改正にも不可欠な証拠として活用され、エビデンスに基づく政策形成を支えてきました。

 

笹川平和財団の支援

こうした背景から、笹川平和財団(SPF)は、WCPUの設立が特に遅れているバンサモロ自治地域(BARMM)において、2024年から2026年にかけて、WCPUの新設や、関連研修実施等への支援を行いました。

WCPUを設立するには、医師、看護師、ソーシャルワーカー他からなる病院内の対応チームが、女性・子ども保護専門家認証(Certificate on Women and Children Protection Specialty Training: CWCPST)を受けることが必要です。認証取得には以下の三つのステップを順に修了することが必要となっています。
 

  • ステップ1:4Rs(Recognizing, Recording, Reporting, Referral)トレーニング

       暴力事案の認識・記録・報告・リファーラルに関する基礎研修
 

  • ステップ2:多職種連携トレーニング

       医療・司法・福祉等の多職種連携チーム支援の実務研修
 

  • ステップ3:女性・子ども保護専門資格研修(CWCPST)

       フェーズ1:講義
       フェーズ2:2週間の現場実習

BARMM地域では、インターネット環境を含む脆弱なインフラや財政的支援の不足等の問題により、多くの病院が上述のステップ2までしか修了できず、専門資格を持つ人材の育成が進みにくいという課題があります。一方で、ステップ3さえ実施できれば、WCPUを設立できる病院が複数存在することが明らかになっており、このボトルネックを解消することが、人材育成と制度強化の要となっています。

こうした状況を踏まえ、バンサモロ自治政府含め他機関の支援が届きにくいステップ3の実施を含めて笹川平和財団が事業を実施したことは、これまで女性や子どもの保護を担う専門機関が存在しなかったBARMM内の地域において、地域の女性・子ども保護体制の強化に直接的に貢献する取り組みとなりました。
具体的に実施した事業内容は下記の通りです。

 

①女性・子ども保護専門資格研修(講義)の実施(2025年1月)
BARMM内の15の郡病院から計12名の医師、14名の看護師、11名のソーシャルワーカーが参加し、講義、ケースワーク、ロールプレイ等からなる研修を受講した後、研修内容の定着度を測定する筆記試験等を実施。結果、全参加者が実務に必要な知識を保有していることが確認されました。
女性・子ども保護専門資格研修(講義)の研修生及び講師

女性・子ども保護専門資格研修(講義)の研修生及び講師

②女性・子ども保護専門資格研修(実習)(2025–2026年)
BARMM内の6つの郡病院が参加し、認定トレーニングセンターで最低5症例の実際の患者対応、包括データベースの入力・管理方法、多職種連携ケース会議や模擬裁判での証言練習等のカリキュラムを全て完了。各病院は独自の運営マニュアル及びアドボカシー計画を整備し、WCPUを設立しました。本研修を経てWCPUを設立したのは下記6病院です。 

Sulu州 ※BARMMからの移行期にあたるが故に、支援が特に行き届きづらい状況にあるため積極的に支援。
1. Panamao郡病院
2. Maimbung郡病院

Lanao del Sur州
3.Wao郡病院
4.Unayan郡病院

Maguindanao州
5. Datu Blah Sinsuat 郡病院
6. Buluan郡病院
 
これらの地域には、これまで女性と子どもの保護の役割をワンストップサービスで提供する公的機関が存在していなかったことから、暴力を受けた子どもや女性が医療・心理・社会・法的支援を一体的に受けられる病院内の専門拠点の開設は大きな意味を持ちます。

SPFの支援によって設立された6病院の位置

研修の様子

Maimbung郡病院のWCPUチームによる、子どもの証人への聞き取りの様子

Maimbung郡病院のWCPUチームによる、子どもの証人への聞き取りの様子

Buluan 郡病院が作成したWCPU運営マニュアルのプレゼンテーション

Buluan 郡病院が作成したWCPU運営マニュアルのプレゼンテーション



 

設立されたWCPUの様子

Maguindanao州 Datu Blah Sinsuat 郡病院のWCPUの様子。

Maguindanao州 Datu Blah Sinsuat 郡病院のWCPUの様子。

Lanao del Sur州のUnayan郡病院のWCPUの様子。

Lanao del Sur州のUnayan郡病院のWCPUの様子。

Lanao del Sur州のWao郡病院のWCPUの様子。

Lanao del Sur州のWao郡病院のWCPUの様子。

③トラウマ・インフォームド・ケア研修(2026年1月)
BARMMおよびミンダナオでは、WCPUにおけるメンタルヘルスサービスの不足が長く課題となってきました。こうした状況を受け、本プロジェクトの最終活動としてトラウマ・インフォームド・ケア研修を実施しました。本研修は、WCPUの職員がトラウマの影響や、被害者の心理的安全性を大切にした関わりを行うための枠組を理解し、被害者中心の支援を提供する力を高めることを目的としました。加えて、激務が懸念されるWCPU職員自身のセルフケアなどについても学びました。

本研修には、笹川平和財団の支援で新設された6WCPUに加え、BARMMおよびミンダナオ全域から計23のWCPUが参加し、WCPU間の学び合いと協働強化にもつながる成果が得られました。

制度化への貢献

2025年12月2日、BARMM保健省、バンサモロ地域警察本部、Child Protection Network Foundation, Inc.が、WCPUの持続的運用を制度面で保障する包括的覚書(Memorandum of Understanding)を締結。人件費の継続確保、病院内専用スペースの提供、ケース管理の実施、政府機関による監督とモニタリングなど、政府が担うべき役割が明文化されました。本覚書は、笹川平和財団が本事業を通じて達成してきた具体的な成果が、公的なパートナーに正式に認められた一つの象徴的な政策的マイルストーンです。本覚書により、公的責任の明確化と持続可能性の担保を実現。ドナー主導の単発研修に終わらせず、地域行政の制度内部に被害者中心の女性・子ども保護機能を埋め込みました。

本事業がもたらしたもの

本事業は、ボトルネックやニーズの特定後直ちに支援を開始し、女性・子ども保護専門家認証研修の実施、新規WCPUの設立、現場モニタリング、そしてトラウマ・インフォームド・ケア研修までを途切れなく展開することで、シームレスかつタイムリーな支援を実現しました。医療×福祉×司法×警察×データ×メンタルヘルスという複数の領域を単一の実装設計に統合し、さらに覚書の締結を通じて被害者中心のサービスを地域医療体制に正式に組み込みました。

こうした総合的なアプローチにより、WCPUを核とした地域ネットワークの基盤が整備され、BARMM全体で被害者支援の質とアクセスが大きく向上する環境が整いつつあります。本事業は、BARMMにおける包括的保護システムの基盤整備を大きく前進させ、今後の被害者支援体制の持続的な強化に向けた確かな土台を築く契機となりました。

出典

Ramiro, L. S., Madrid, B. J., Norton Staal, S., Cajayon Uy, M. M., & Luna, P. B. (2022). “National Baseline Study on Violence against Children and Youth (NBS VAC) in the Philippines.” Acta Medica Philippina. https://actamedicaphilippina.upm.edu.ph/index.php/acta/article/view/5062

 
Panoringan, H. (2024, October 25). “Over 18,000 child violence cases in the Philippines in 2023.” Smart Parenting. https://www.smartparenting.com.ph/life/news/pnp-18k-child-violence-cases-2023-a6837-20241025

 
Philippine Statistics Authority (PSA), & ICF. (2023). “Philippines Demographic and Health Survey 2022: Key Indicators Report (PR146).” DHS Program. https://www.dhsprogram.com/pubs/pdf/PR146/PR146.pdf
 
 
 

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