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平和構築支援グループ

コミュニティ調停が紡ぐ「平和」──関係の回復を目指して

2026.04.20
11分
紛争後の社会が抱える最大の課題の一つは、人と人との「関係の断絶」である。暴力の経験によって失われた信頼、対立を生む社会構造、そして当事者の無力感──これらは、法律や制度改革だけでは回復しきれない深い溝として残り続ける。こうした状況で、人と人の距離をもう一度つなぎ直す営みとして力を発揮してきたのがコミュニティ調停である。

調停は一般的に、利害の調整や和解を促す実務的手法として捉えられがちだ。しかし、今回注目したいのは、調停が単なる「紛争を解決する技術」を超えて、人々の内面と関係性そのものを変容させる力を持つという点である。Bush & Folgerが提唱した“Transformative mediation(変容型調停)”は、まさにこの「自己回復へのエンパワメント」と「他者理解認識」を核に据えている[1]。対立や暴力を経験し傷ついた人々が調停のプロセスを通じて自己効力感を取り戻し、相手を人として再認識できるようになること─その変化こそが、持続的な平和構築の基盤となる。
 
[1] Bush, Robert A. B. and Joseph. P. Folger.2005. The promise of mediation: the transformative approach to conflict. San Francisco: Jossey-Bass Publishers.

フィリピン・ミンダナオ・バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)の調停人が示した文化と紛争解決の結びつき

笹川平和財団は、現在、フィリピンのミンダナオ、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)において、コミュニティ調停にかかる支援を計画しており、2025年にコンシリエーション・リソーシズと協働で初期調査を実施した。先述の視点は、その調査結果をまとめた『初期調査報告書-ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治地域におけるコミュニティ調停の実態』[2] でも見て取れる。BARMMは、土地・資源、氏族間抗争(リド)、政治的対立、家族間トラブルなど、多層的で互いに影響し合う紛争が複雑に絡み合う地域である。しかし、調停人たちの語る実践には共通点がある。それは、調停プロセスを通じて紛争の根底にある「関係の損傷」を回復するという目的が、地域文化の論理と深く結びついているという点だ。

BARMMの調停人たちは、地域社会に根ざした価値観─名誉(maratabat)、血縁関係、宗教の影響力、慣習法の重み等─を踏まえながら、紛争当事者が「対話」に戻れるような空間をつくり出す。調停人は紛争当事者の「関係性」を重視し、対立のエスカレーションを防ぐために、双方が利益を得られる “win-win” の解決を模索する。

このプロセスは、外部から見ると非公式で柔軟すぎるように見えるかもしれない。しかし、この柔軟性こそが、制度と住民の間の大きな距離を埋め、紛争の再発を防ぐ役割を果たしている。

BARMMの調停人は元戦闘員、宗教指導者、女性リーダー、村の長老、地方行政官など、多様な背景をもつ。こうした重層的な権威の存在は、中央集権的な制度に慣れた社会ではしばしば複雑と思われがちだ。しかし、逆にこの複雑さこそが、BARMM地域の持つ潜在的な強みとも考えられないだろうか。複数のエントリーポイントや代替手段が存在することで、司法制度だけでは吸収しきれない紛争が、地域のネットワークの中で解きほぐされていく。これこそが、調査を通じて浮かび上がったコミュニティ調停の重要な効用の一つである。
 
[2] Conciliation Resources and Sasakawa Peace Foundation. 2026. Rapid baseline study – COMMUNITY MEDIATION PRACTICES IN THE BANGSAMORO AUTONOMOUS REGION IN MUSLIM MINDANAO

ネパールとの比較から見えるもの

このBARMMの実態は、ネパールのコミュニティ調停とも響き合う。ネパールでは、内戦後の国家再建の一環として調停が制度化され、国としてコミュニティ調停を地域行政に組み込み、分断されたコミュニティの中に平和を構築する取り組みが進んだ。そこで生まれたのは、住民が自らの力で紛争に向き合い、コミュニティの中に対話を通して平和を構築していくための「復元的な空間(restorative space)」である。文化の違いはあれど、共通して「関係を修復するための場」をつくり出す点に価値がある。

ネパールと比較して見えてくるのは、次のような共通点だ。
  • 調停が制度の限界を補完する役割を果たす
  • 文化や慣習が調停の正統性を支える
  • 調停人への「信頼」が調停活動の持続性を左右する
  • 調停では、社会関係の再構築に重きが置かれる

調停は、外部が想像する以上に文化に根差した実践である。そして文化に根ざすからこそ、当事者の心の回復を支え、コミュニティ全体の関係の再編を促す力を持つ。

現場が直面する課題──調停人の負荷、女性・若者の参画不足、政治的介入

しかし、調停が万能というわけではない。BARMMでの調査からは、以下のような実務的課題が浮き彫りになった。
 
  • 調停が政治的利害に巻き込まれ、中立性が損なわれるリスク
  • 活動のための資源(調停人の移動手段・記録ツール等)の不足
  • 女性、若者、障がい者、先住民族などマイノリティの参画が限定的
  • 調停の成功が特定の調停人の能力に依存しすぎる構造
     
これはネパールでも共通する課題であり、ネパールでは制度化を通してこれらの課題に対応しているが、調停人への制度的サポートが不十分なBARMMの場合、コミュニティ調停活動そのものの持続性が失われてしまう事が懸念されている。

コミュニティ調停の可能性─人と人との関係性をつなぎなおす「社会的インフラ」として

では、BARMMにおけるコミュニティ調停をどのように強化していくべきなのか。今後の事業を通して笹川平和財団が重視したいと考えているのは、次の3点である。
 
  1. 調停を通じてコミュニティの関係性そのものを強化すること
      ◦ 女性、若者、障がい者、先住民族等マイノリティの参画促進
      ◦ 多様な価値観を取り込む包摂的な調停空間の構築
      ◦ 紛争の再発を防ぐことを目指した関係性の再構築
     
  2. 制度とコミュニティの間に「橋」をつくること
    ​​​​​​​  ◦ 調停活動と自治政府・司法制度をつなぐ
    ​​​​​​​  ◦ 文化や慣習法を尊重した制度設計を進める
     
  3. 調停人に十分な支援を行うこと
    ​​​​​​​  ◦ 交通手段、記録機材、研修等調停活動実施に必要な資源の提供
    ​​​​​​​  ◦ 中立性を守るための持続的・非政治的資金支援
    ​​​​​​​
調停は、単に司法プロセスのスピードを改善するための道具ではなく、平和を持続させるための社会的インフラである。それは、人々の心理的回復、社会関係の再編、そしてコミュニティの自立的な紛争管理能力を同時に育む。コミュニティ調停には、単純な制度の改革だけでは届かないコミュニティ内での人と人との「関係の平和」をつくり出すことさえできる可能性がある。

ネパールやBARMMにおけるこれまでの調停活動の実態は、平和構築を「制度中心」から「関係中心」へと再設計するヒントを与えてくれる。笹川平和財団としても、引き続きBARMM地域の豊かな経験や知識に敬意を払いながら、コミュニティ調停の可能性をさらに深め、政策と現場をつなぐ支援に取り組み続けたい。

【出典】

Bush, Robert A. B. and Joseph. P. Folger.2005. The promise of mediation: the transformative approach to conflict. San Francisco: Jossey-Bass Publishers.
 
Conciliation Resources and Sasakawa Peace Foundation. 2026. Rapid baseline study – COMMUNITY MEDIATION PRACTICES IN THE BANGSAMORO AUTONOMOUS REGION IN MUSLIM MINDANAO
 
 
 

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