豪州は、6月29日にバヌアツと締結したナカマル協定に続き、7月6日にフィジーとの間で「Vuvale Union(ブバレ連合)」および「Ocean of Peace Alliance(平和の海洋同盟)」という2つの条約を締結しました。前者は社会経済開発分野における既存のブバレ・パートナーシップを発展させた包括的な枠組みであり、後者は相互防衛条約に位置付けられます。これにより、フィジーは豪州にとって、米国、ニュージーランド、パプアニューギニアに続く4か国目の同盟国となりました。
今回、先日のバヌアツとのナカマル協定と同様にオーストラリア先住民についても触れられています。これによりオーストラリアは文化人類学的にも太平洋島嶼国と深いつながりを有していることを示し、旧宗主国側(フィジーの旧宗主国は英国)と旧統治領の上下関係ではなく、これらの条約が家族的な親族的な対等な繋がりに基づくものと印象付けています。
豪州は、2023年11月のツバルとのファレピリ連合条約を皮切りに、ナウル・豪州条約(2024年12月締結)、パプアニューギニアとのプクプク相互防衛条約(2025年10月締結)、バヌアツとのナカマル協定(2026年6月締結)、そして今回のフィジーとの2条約(2026年7月締結)と、相次いで安全保障関連の条約締結に成功しました。南太平洋における安全保障基盤の再強化が着実に進んでいると言えるでしょう。一方、米国も2023年にパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島との自由連合盟約の改定に成功しています。
太平洋島嶼地域では、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機に米国の安全保障上の警戒感が高まり(同年4月、パラオ政府高官からも同様の認識を聴取)、さらに同年4月の中国とソロモン諸島との安全保障協定締結が、地域安全保障秩序に対する重大な挑戦と受け止められました。これを受け、米豪両国は戦後秩序の基盤である地域安全保障レイヤーの強化へと大きく舵を切ったものと考えられます。
2025年3月にキャンベラを訪問した際、豪州国防省および外貿省の担当者と意見交換を行う機会がありました。その際、外貿省の太平洋島嶼国担当職員数が300人を超える規模に増員されていることを伺いました。また、在フィジー豪高等弁務官事務所(大使館)の職員数も10年前の2倍以上となる70人超に達しており、フィジー向けの投資や開発協力も、主要な開発パートナーの中で突出した規模となっています。さらに、第2次トランプ政権による西半球重視政策は、見方を変えれば豪州に対して地域安全保障上のリーダー的役割を期待するものであり、豪州の取り組みを後押しする要因となっているようです。
ニュージーランドは、現時点では豪州ほど目立った動きを見せていないようにも映ります。しかし、太平洋島嶼地域の安全保障を基盤とする地域秩序は、従来と同様に、北半球を米国、メラネシア地域およびナウル・キリバスを豪州、ポリネシア地域を豪州とNZ(特にクック諸島とニウエはNZ)という形で支えています。
2019年頃から、複雑化し不安定化する地域秩序構造に対して、北半球のパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島といった米国自由連合国については日米を中心に豪州・NZが協力し、南半球については豪州・NZ(あるいはNZ・豪州)を中心に日米が協力するという、同志国と対象となる太平洋島嶼国によるグルーピング・アプローチの重要性を各所で提唱させていただく機会がありました。しかし、その前提となるのは、米国、豪州、NZが戦後一貫して担ってきた地域秩序構造の基盤を支える役割が十分に機能していることです。現在、その基盤を再強化するプロセスが着実に進展しているように見えます。
一方で、一昨年8月の第53回PIF首脳会議(トンガ)では首脳コミュニケ最終案の修正が行われ、また昨年9月の第54回PIF首脳会議(ソロモン諸島)では台湾代表団の入国拒否を発端として、1980年代後半から継続されてきた首脳と域外国の対話が中止される事態となりました。私が現地を何度も訪問する中で得た感触では、これらの出来事はPIF首脳による意思決定が外部圧力によって変更を強要されたものと受け止められており、地域には静かな怒りが広がっていました。
今回の動きについては事前に把握していませんでしたが、私は7月5日にフィジーのスバ入りし、7月7日にはフィジーのディトカ外務大臣およびティコンドゥアンドゥア防衛大臣、トゥランガ法務大臣を表敬訪問する機会をいただきました。
https://blog.canpan.info/spinf_shio/archive/2896
https://www.facebook.com/story.php?story_fbid=1499389275566837&id=100064873352508&mibextid=wwXIfr&rdid=ZTb9Swq1pWeVm8hI
今後、太平洋島嶼地域では、8月末に第55回太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議(パラオ)、10月上旬に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)Pre-COP(フィジー及びツバル)が予定されているほか、外相級の太平洋・島サミット(PALM)中間閣僚会合(フィジー)の開催も見込まれています。これらはいずれも、日本が太平洋島嶼国地域への関与を着実に示し、地域との連携を一層強化する重要な機会となります。