昨日(2022年7月11日)のキリバスPIF脱退に関するコメントで触れた、議会における脱退決議の問題がマーシャル諸島で発生しました。また、マーシャル諸島の正式脱退通告は2021年2月下旬ではなく3月10日であったことが判明しました。
ここでは決議35を2021年 PIF脱退決議として扱いますが、本記事を読むと、本年2月に正式脱退通告が発効するはずであったミクロネシア連邦が、米国の取り組み(プナ事務局長を退任させ、別のポストに付けるという調整など)を受け、他のミクロネシア諸国首脳に働きかけ、脱退手続きを6月まで一時停止することとなりました(
ミクロネシア諸国首脳、PIF事務局長の6月までの退任を期待(2月14日、ポンペイ、ABC/PACNEWS))。
本年3月には、マーシャル諸島のカブア大統領が、正当な手続きで選ばれたプナ事務局長を退任させることは望まないと発言しました。対外的にはミクロネシア諸国が一致しているように見えましたが、実際には口頭のやり取りであり、公式の手続きは曖昧であったことが分かります。
昨日(7/11)に取り上げたキリバスのマーマウ大統領の書簡からは、同国がミクロネシア大統領サミット(MPS)における2020年10月の共同声明(Mekreos Communique:事務局長職に関する紳士協定が守られない場合、PIFを脱退するなど含む)と、同声明を支持し5か国がPIFを脱退するとした2022年2月のMPS共同声明に基づいて国内手続きを進めたことが推察され、同大統領はMPSとしてこれらの共同声明の内容を取り消すとの正式合意はなされておらず、依然として有効との立場であることが分かりました。
マーシャル諸島の今回のケースは、ケリー議長のプライドの問題だと考えられます。本年2月時点では、脱退手続き(マーシャル諸島の場合、決議35)を取り消すのではなく6月まで一時停止するという話でしたが、ケリー議長はその時点で「決議35を取消す決議」案を作っており、これが外務省や国内委員会が「6月まで一時停止する」と書き換えたことは当然のことです。
繰り返しになりますが、本年2月の段階ではMPSの共同声明に基づき、あくまでも「プナ氏の退任」が脱退回避の最低条件であり、米国が調整し6月に退任する道筋をつけたので、6月に本当に退任となるか慎重に見極めるため、ミクロネシア諸国はそれぞれ脱退手続きの取消ではなく、一時停止という対応を取りました。キリバスの場合は、脱退回避の最低条件が満たされていないため、そのまま7月付で脱退したという立場になります。
マーシャル諸島の場合は、本来は決議35を一時停止する決議を本年3月10日までに成立させ、6月のスバ協定案合意の後に、決議35を取り消す決議を通さなければなりませんでした。しかし、上記の修正に対して議長が憤慨し、修正決議案を廃棄してしまったため、2021年3月10日にフィジー外務省に提出されたPIF脱退通達は効力を維持したままとなり、法的には本年3月10日にマーシャル諸島はPIFを脱退していたことになります。
PIF加盟資格については、1990年以前の情報を見ると、太平洋島嶼国が独立することで加盟が認められており、PIFに加盟することが独立国としてのステータスの1つとなっていました(その後にまとめられた2000年PIF事務局設立協定ではなく、2021年8月にフィジーが批准し成立した2005年PIF協定ではterritoryは準メンバーと記載されています。2017年に加盟が認められた仏領2地域は2000年協定下で加盟したことになります)。
マーシャル諸島は1979年に自主憲法を制定し自治政府を樹立しましたが、米国自由連合国として独立したのは1986年であるため、1987年にPIFへの加盟が認められました。ちなみに、非自治地域リストについては、米国との自由連合盟約締結後も国連によるモニタリングが行われ、1990年にリストから削除されたという経緯があります。
さて、マーシャル諸島の場合は、あくまでも国内の法的手続きの問題であるため、いずれ解消されると考えられますが、マーシャル諸島が復帰するためには全ての加盟国・地域が承認しなければなりません。その場合、マーシャル国内における決議35の破棄もしくは(既に脱退期限を過ぎたため決議35が意味をなさない場合)PIF再加盟決議があり、次のPIFサミットもしくは臨時サミットにおいて全加盟国・地域に承認されなければならないため、復帰には時間がかかる可能性があります。