パプアニューギニアでは5年ぶりの選挙が7/4から始まります。一日で投票が終わる選挙区もあれば、数日続くところもあるようです。開票は7/29から(本稿執筆時点)と伝えられています。
今回の選挙は、2019年5月に内閣不信任決議を避け辞任したオニール前首相の後に議会で選出されたマラペ首相にとって、その政権の信を国民に問う初めての選挙となります。マラペ首相は、首相就任以前は、オニール首相率いるPNC党(Pepple's National Congress)やNAP党(National Alliance Party)に所属したこともありますが、現在、かつて建国の父といわれた故サー・マイケル・ソマレ元首相が率いて1975年の独立時に政権を担っていたパング党(Pangu Pati)のリーダーとして首相を務めていることは興味深いところです。
今回のパプアニューギニアの選挙は、小選挙区96議席(今回は7増)と20州・ブーゲンビル自治州・首都圏(NCD)各1議席の22議席、の計118議席を約3500人(53の政党や無所属)が争います。なお、各州1議席の当選者は州知事も担います。
投票方法は、
Limited Preferential Voting(LPV)が採用されており、有権者は投票時に候補者に1位から3位まで順位をつけて投票します。
1回目の開票作業では、1位票を集計しますがいずれの候補者も過半数に満たない場合、最下位の候補が落選し、落選者に対する投票用紙の2番目の人物に票がカウントされるもので、これを過半数を獲得する候補者が出るまで繰り返されるそうです。そのため、最終結果が判明するまで多くの時間を要することになります。
選挙結果が判明すると、英国国王の代理である総督が最大議席を獲得した政党に対し政権樹立を指示し(過半数を獲得する政党がないため)、最大政党を中心とする連立による議会与党が形成され、最大政党から首相が選ばれます。また、議会ではたいていの場合、議会与党、議会野党、クロスベンチャーの勢力が作られます。パプアニューギニアでは議員による所属政党を変える動きが多く、政党も与党側と野党側の間で動くことがあるため、安定さを欠く面があると考えられます。
今回の選挙では、マラペ首相のパング党とオニール前首相のPNC党のいずれが最大政党になるのかが注目されており、それぞれ選挙戦に加え、現地では選挙後の多数派工作が行われており、パング党、Patrick Pruaitch 氏率いるNAP党(National Alliance Party) 、William Duma 氏率いるURP党(United Resource Party)が選挙後に連立政権を作るとの報道もありました。
これは筆者の個人的な印象になりますが、オニール首相は経済開発優先でPNGのマクロ経済は発展させたものの、富が国全体に行きわたらず、国内の開発格差や経済格差を広げ、UBS(Union Bank of Swiss)に係る問題も指摘されています。一方で、マラペ首相はTaking Back PNGを掲げ、一部の都市部の発展ではなく、国全体の発展を描き、富を国民に分配する考えに見えます。例えば、ポルゲラ金鉱山の採掘権に関し、オニール前首相は金価格が高騰している時代に採掘していないことは国家経済にとって不利益であるとしてマラペ首相を批判する一方で、マラペ首相はオニール前首相政権時代の2019年に同鉱山を外国に売ろうとしていたと指摘したり、地権者への利益確保や環境問題を背景に外国企業への採掘権許可を急がないとするなど、立場の違いがあります。
パプアニューギニア国民が、故サー・マイケル・ソマレ首相のように広く国全体の発展を目指すマラペ首相と、マクロ経済・経済開発主導型のオニール前首相のいずれを選ぶのか、あるいは第三極が現れるのか注目されます。結果は8月中に判明するとみられます。