控訴裁判所の判決によりサモア新政府が誕生

(2021年7月26日、TALAMUA ONLINE/PACNEWS)

【抄訳】
サモア独立国の控訴裁判所は、5月24日に即席で行われたFAST党議員26人による就任宣誓式は、同国の最高法規である憲法に適合しており、合法であると宣言した。
 
7月23日遅くに出された33ページにわたる判決文は、「2021年5月24日以降、サモアに合法的な政府が存在し、その合法的な政府とは、議会で過半数の議席を持つFAST党である」と述べている。
 
最高裁判所長官及び判事2人で構成されるパネルは、裁判所が、暫定政府をサモア独立国政府とは認めないという判決を下した。
 
「新政府が存在するという事実がある。補欠選挙及び憲法第44条(1A)に基づく調整により、立法議会の過半数の議席が獲得されれば、当然この認識は変更される」
 
この結果、FAST党は2021年5月24日に憲法上の宣誓をしており、執務を開始する権利があることになる。判決文は、「疑念と混乱を避けるために、判決日から政権を握るべきであると考える」としている。
 
今回の判決は、国の最高法規としての憲法は、国家元首の権限を超越することを示した。控訴裁判所はさらに、最高裁は国会の召集を指示する命令権を持つという判断を下した。
 
また、判決では、2021年7月4日の国家元首の宣言及び権力の主張は、憲法が定める高官の機能にそぐわない行為であるとし、「最高裁判所に議会の召集を命令する管轄権がないという国家元首の主張は誤解である」と述べた。
 
「国家元首は、その権限をもっぱら憲法から得ている。国家元首が他の権力源を持つかどうかは、本法廷で議論された問題ではなく、より適切な時期に任せた方がよいテーマである。本法廷では、憲法第52条に基づく立法議会の召集及び宣誓式における国家元首の権限の範囲についてのみ検討する」
 
「今回発見されたように、国家元首は自身の憲法上の役割について基本的な理解不足を示し、最高裁判所の役割と憲法上の裁判所の権限の範囲についても同様に基本的な理解不足を示した」
 
「憲法が要求するのであれば、最高裁判所は国家元首に議会の召集を命じることが可能であり、それは非難の余地がない。誰がその問題を判断するかは、場合によっては最高裁にかかってくるかもしれない」
 
控訴裁判所の判決は、2021年5月24日の宣誓を違憲とした先の最高裁の判決も覆したことになる。
 
「宣誓はそれ自体が合憲かつ合法であり、必要性の教義を検討する必要はないと判断する」
 
「また、司法長官による命令の条件に対しての不服申し立てについては、本法廷では検討不要と考える。学究的関心があるとはいえ、現在の政治的行き詰まりの解決策を見つけるという意味では、レッドヘリング(論点すり替え)とみなされる」
 
「また、暫定政府の役割を担ってきた人々が、今後、暫定政府の名の下に個人的又は集団的に起こす行動は、裁判所によって違憲かつ非合法なものとみなされ、それゆえ効力を持たない点を指摘する。さらに、これらの行為者は、自らのいかなる行為に対しても個人的に責任を負うものとする」
 
「この判決と宣言を発効するのは、新首相とその政府である」
 
控訴裁判所は、最高裁判所は憲法の守護者であり、最高法規の下で法の支配と民主主義を守り維持していくとした。その上で、暫定政府による申立てを全面的に棄却し、FAST党側の申立てを支持した。
 
「2021年5月24日、議会外で行われた当選議員による宣誓は、サモアの最高法規である憲法の条項に適合しており、合法であることを宣言する」
 
「なお、これは2021年5月24日以降、サモアに合法的な政府が存在し、その合法的な政府とは、議会で過半数の議席を持つFAST党であることを意味する」
 
(訳:立入瞳)
 
 
【コメント】
4月の総選挙後、混乱を続けたサモア政治は、ようやく終着点を迎えました(関連記事はこちら→https://www.spf.org/pacific-islands/breaking_news/20210505-1.html)。
 
大きく見ると、現代法による法の支配と伝統的支配構造のぶつかり合いであり、最終的には法の支配が機能したといえるでしょう。
 
ここまでの経緯を再掲します。
 
1.昨年4月から今年の総選挙まで(RNZ: Radio New Zealand記事タイトルから)。
2020年
4/18    サモア政府、コロナ禍を利用し、憲法改正か(3法案)
4/29    トゥイラエパ首相・マタアファ副首相、議会で対立 選挙改定法採決で
5/8      憲法改正含む法案の反対集会、野党代表驚き
5/18    与党議員, 首相に退陣求む
5/20    首相, 退陣要請与党議員に, 党務支持か離党を提案
5/25    サモア3法案, 住民公聴会実施も, 情報不十分
5/27    シュミット元大臣, 憲法3法案反対,首相の離党要請拒む
5/30    シュミット元大臣, 与党離党
6/1      サモア シュミット元大臣, 新政党FAST設立
6/30    シュミット議員, 3カ月資格停止受け辞任(3名離党)
9/15    マタアファ前副首相, 辞任、理由説明
12/10  議会, 土地権利など憲法に係る3法案決議へ→12/15可決
 
2021年
1/18    マタアファ前副首相, 新政党FASTに参加
3/12    マタアファ前副首相, 総選挙前に野党党首に就任
4/9      総選挙
 
2.総選挙後の動き(~6/4まで)
4/9      総選挙の結果、与党HRPP(人権保護党)25議席、新党FAST党25議席、無所属1議席
4/20    無所属1名が新党FASTに合流、HRPP25議席、FAST26議席
4/25    女性5名当選、しかし、全議席の10%が女性という規定を満たさないとして、選挙区で次点だ 
    った女性候補(HRPP党)が女性6議席目として当選。51議席の10%は5.1議席となるが、
    5.1を5議席とするのか6議席とするのかで見解分かれる。
     これにより、議席数は再びHRPP26,FAST26
5/4      ここで国家元首があらわれ(国王や大統領とは異なる)、5/21再選挙を要請
5/5      FAST党、国家元首の要請は憲法違反として最高裁に提訴
5/17    サモア最高裁、女性6議席目を無効と判断、5/21再選挙要請も退ける
5/19    FAST党、5/21の議会開会要請(首相就任の場)
5/23    議会開かず。議長が鍵を持って消える。
5/24    議会外でマタアファFAST党首、首相就任宣言
5/25    トゥイラエパ暫定首相、マタアファFAST党首を国家反逆と非難、相互にクーデターと指摘
6/4      トゥイラエパ暫定首相、マタアファFAST党首が秘密会談
 
前回の記事では、6/4の両党首会談により事態の変化が期待されましたが、まだ混乱が続きました。6/4以降の動きは次のようになります。
 
6/28   サモア最高裁、5/24にHRPP暫定政権の妨害により議会が開かれないために場外で行われた
    マタアファFAST党首の首相宣誓式を無効と判断。これはFAST党の勝利を否定するものでは
    なく、議会を開くことを重視したもので、最高裁は1週間以内の議会開会を命じた。
     当時、HRPP側は不正により1議席失い、FAST党26、HRPP24 議席となっていたため、議
    会を開けば、FAST党が過半数を占め、正式にFAST党政権が誕生することになっていた。
      トゥイラエパ暫定首相、国家元首は最高裁命令に従わず、訴追の恐れ(RNZ)。
7/1    HRPP側はさらに2名の当選が無効となり、議席数はFAST党26、HRPP党22。
7/6      NZのアーダーン首相が「サモア自身で事態を解決できると信じる」との声明を発表
         (RNZ)、内政干渉を避ける。
7/12    コモンウェルス事務局長、両党首と協議を模索(RNZ)。
7/16    サモアの憲法危機、控訴裁へ(RNZ)。※控訴裁が最高裁の上位に位置する。
 
その後、HRPP党は選挙不正で当選無効が相次ぎ、7/16時点で議席数はFAST26、HRPP17になりました。補選を行えば、HRPP側の議席数がある程度回復する可能性があるが、補選実施まで待てる状況にはありません。
 
HRPP側は控訴裁の判断前に、司法への反抗などさまざまな抵抗を見せていたようですが、7/23、記事にあるとおり控訴裁が判決を下しました。
 
記事にあるとおり、5/24の宣誓式が有効と判断したことで、憲法規定期間内に首相が選出されたことになります。これが否定されると、その後、議会で改めて宣誓式を行ったとしても、首相の正当性が問われることとなります。
 
次に、5/24の宣誓式が有効であったということは、5/24から7/23までのトゥイラエパ暫定政権が正当性なく2カ月間統治していたことになり、クーデターのような状況になります。判決文では、5/24からFAST政権に正当性があると認めるものの、「疑念と混乱を避けるために、判決日から政権を握るべきであると考える」としています。
 
この判決に対し、同日、トゥイラエパ暫定首相(当時)は裁判による決定は違憲であり、無礼だとの声明を出しました。しかし、各国が相次いでマタアファFAST党首に対し首相就任を祝福し、サモア国家元首が祝福したことで、ついにトゥイラエパ暫定首相が4/9の選挙の敗北を認めました。
 
トゥイラエパ前首相が何故ここまで粘らなければならなかったのか、今後、その理由が明らかになるかもしれません。
 
(塩澤英之主任研究員)

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