さて、サモアの場合ですが、サモアには英国式の現代法であるコモンローおよびエクイティと、サモア慣習法があります。司法制度も複雑で、現代法に基づいて裁く裁判所(最高裁まで)と、サモア慣習法に基づく土地・称号裁判所(Land and Title Court)で分離されており、土地やマタイの権利に関する問題は後者の下で判断されます。
また、村落内の問題は、法令(Village Fono Act)に基づき、マタイの会議によって解決が図られ処罰や称号の剥奪などもそこに含まれます。マタイの会議では伝統的慣習や掟によって裁かれるわけですが、人為的な要素もあり、憲法で保障されている人権や信教の自由を侵害する場合があると問題視されてきました。大きな問題については、最高裁の監督下にあるLand and Title Courtで判断されていたということです。
しかし、Land and Title Courtにも明文化されず口頭で判断されたり遅延などの問題があり、その判決を受けても上訴することができませんでした。ただし、憲法で保障されている人権を守る立場にある現代法に基づく最高裁が監督しているため、実際にマタイ制度に関わるもので、Land and Title Courtの判断が最高裁の判断で覆されるということもあったようです。
この司法制度の改革を進めたのがHRPPおよびトゥイラエパ政権になります。
内容は、伝統的慣習法に基づく判断に対する現代法に基づく最高裁の介入をなくすため、Land and Title Courtを最高裁の監督下から外し、Land and Title High CourtとLand and Title Court of Appeal and Reviewを設置するというものでした。