Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第533号(2022.10.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

◆9月の3連休も台風15号による大雨で各地に被害が生じた。被災された方々にお見舞いを申し上げたい。台風時の高波を弱める自然の防波堤としてのサンゴ礁の恩恵にわれわれは浴しているが(本誌426号)、そのサンゴ礁も地球温暖化による異常な海水温の上昇により白化現象が続いている(本誌459号)。世界の熱帯サンゴ礁は、地球温暖化を産業革命前と比べて1.5℃の上昇に抑えるというパリ協定の最良シナリオが達成されたとしても、その最大90%が今後数十年で失われかねないという。
◆Carlos M. DUARTEサンゴ研究開発促進プラットフォーム(CORDAP)事務局長からは、サンゴおよびサンゴ礁の未来を守るのに必要な技術やイノベーションを提供する国際的な研究開発を目指すCORDAP戦略計画によるサンゴの再生・保全の活動をご紹介いただいた。この戦略計画は、研究の戦略的方向性の策定と更新、研究開発プログラムの設計および指導を担当する国際組織であるCORDAPの科学諮問委員会によって作成され、今後はG20の代表と国際組織で構成されるイニシアチブ統治委員会(IGC)によって承認されるという。海洋生態系の保全を目指す活動に期待したい。
◆樋口恵佳東北公益文科大学公益学部准教授からは、2021年から2030年の「国連海洋科学の10年」の提案機関かつ実施調整機関であるユネスコ政府間海洋学委員会(UNESCO-IOC)による海洋空間計画に関するガイドラインに照らして、海域利用に関する日本の再エネ海域利用法がその基準を満たしているかどうかを分析する論稿をいただいた。UNESCO-IOCガイドラインが要請する10のステップは、すべて再エネ海域利用法の制度枠組みのいずれかにおいて確保されているものの、ステークホルダーの参加の機会が確保されていないステップ(3および5)もあるという。ガイドラインを意識した法の運用が求められる。
◆関口博正神奈川大学「海みなと研究所」所長・経営学部教授から、2021年4月に開設された神奈川大学みなとみらいキャンパスに翌年2月1日に設立された「海みなと研究所」についてご紹介いただいた。同研究所が進めている水中ソーラーシステムの研究や横浜市港湾局と連携した「みなと歴史ガイド」の認知度および運用改善調査については、本誌を一読していただくとして、本誌の初代の共同編集代表であった來生新放送大学前学長と中原裕幸(一社)海洋産業研究・振興協会顧問を上席研究員として招聘された由。お二人の知見を活かした研究所の今後の発展に期待したい。(坂元茂樹)

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