Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第80号(2003.12.05発行)

第80号(2003.12.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆しばらくぶりの特集号で、環日本海。

◆辺オピニオンは、日本海海底トンネルという壮大な夢にかける韓国側の熱気を伝える。その戦前からの歴史、微妙な政治情勢下にある朝鮮半島の鉄道の連結、シベリア鉄道でヨーロッパにつながる貨物輸送市場と資源開発等、興味深い情報で満ちている。21世紀の夢が採算性と結びつく日の到来することを願いたい。

◆海野オピニオンは、そのような市場の採算性の要請が、環日本海の経済交流の構想を当初の計画通りに実現することをはばむ原因を分析する。経済のさまざまな環境変化は人々の夢の実現に影響を与えるが、逆に、人々の夢にかける情熱が、長い目で見た経済環境の微妙な変化をいち早く察する感性を生み出し、それを変えうる。冷静な頭脳と熱い心の組合せが必要。

◆そのような頭脳の働きが、視点を少し変えることでまったく異なるものとなることを教えるのが橋本オピニオンである。地図では北が上であることを当然と考えるわれわれの日常的な感性が、南が上の地図を見る時に受けるショックは強烈である。コペルニクス的転回の日本海ミニチュア版。日本海の総合的研究が、それぞれの学問領域にパラダイム変化をもたらすような、大きな成果が上がることを期待したい。

◆冬の日本海といえば一般的には暗いイメージだが、さまざまな夢が展開される本号のイメージにふさわしいきれいな一句を。「時雨虹日本海の波間より」(三浦恵子)。夢が虹と同じに瞬時に消えるはかないものだとしても、それが少しずつ姿を変えて着実に再生し、実現に近づいていくならば、一つ一つの夢のはかなさ自体には貴重な価値がある。アラビアのロレンスと呼ばれたT.E.Lawrenceの夢についての言葉。All men dream: but not equally. Those who dream by night in the* dusty recesses of their minds wake in the day to findthat it was vanity: but the dreamers of the day are dangerousmen, for they act their dream with open eyes to make itpossible. (了)

第80号(2003.12.05発行)のその他の記事

ページトップ