Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第76号(2003.10.05発行)

第76号( 2003.10.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「鮭獲りの火消え星座移り行く」(松井鴉城夫)。秋の味覚の代表である鮭も、最近は輸入物との競争でなかなか大変と聞く。外国産の鮭といえば、真っ先に思い浮かぶのがノルウェー・サーモンで、スモークやバタ焼き等、やはり洋風が良く似合う。また、新潟も鮭では有名で、三面川の村上の鮭は全国にその名を馳せている。76号はノルウェーから新潟までを船でつなぐ。

◆伊藤オピニオンは、バイキングと海産物の国という印象の強いノルウェーの海運・海事産業について興味深い事実を伝える。漁業と石油産業の共存のために海洋汚染対策に力を注ぎ、防除資材・技術で世界一という紹介は、ノルウェー産の鮭やシシャモ等をこよなく愛する編集子のような食いしん坊にはうれしい限り。海をテーマに両国のいっそうの可能性、発展性を探り続けるべきとの提案に大いに賛成したい。

◆野口オピニオンは、さまざまな意味で厳しい状況下にある内航海運の再活性化に向けて、産業のレゾン・デートルの主張と関連産業・国への注文を率直に展開する。注文を受けた関係者はどのような感想をお持ちになるだろうか。積み重ねられたカルテル政策のつけを、誰のどのような負担によって解決すべきか、内航海運がわが国の経済において果たす重要な役割を考え、多くの読者の活発な反応を期待したい。

◆栗原オピニオンは、河川の舟運を復活させようとする新潟の挑戦を伝え、水の都づくりのロマンを企業化する試みにかかわる地域の人々の反応や、行政の対応、問題の所在を、現場の視点で明示する。交通手段の歴史的な変遷の中で、古いものに新たな息吹を与えようとする努力は貴重である。個性的な街の復活のために、市場の補完として、行政の支援をより有効に展開する価値は大いにあろう。われわれも、誘い合って信濃川水上バスを体験したいもの。秋は観光の季節でもある。

◆最後に、秋の旅愁と舟の歌一首。「ほのぼのと明石の浦の朝霧に島隠れ行く舟をしぞ思ふ」(よみ人しらず古今和歌集)。(了)

第76号(2003.10.05発行)のその他の記事

ページトップ