Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第601号(2026.01.20発行)

編集後記

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所所長◆牧野光琢

◆第2次トランプ政権の誕生から始まった2025年は、世界の海洋科学にとっても大きな動きのある年でした。これまで世界の気候変動研究や生物多様性研究をリードしてきた米国の科学政策の転換は、海洋に関する国際共同研究や国際シンポジウムの中断、国際共同海洋観測・調査の縮小や米国研究者の欠席、外国人研究者による米国への留学や訪問の中止、米国の科学データへのアクセス制限、NOAAをはじめとする米国研究機関における研究者解雇や研究室の縮小など、多様な影響をもたらしました。また同時に、今後日本が海洋科学の国際連携・協力体制をリードしていくべきとの認識を国内関係者で共有する機会となりました。◆米国における海洋科学の縮小は、欧州諸国の研究者にも大きな意識転換をもたらしました。6月にフランスのニース市にて開催された第3回国連海洋会議(UNOC3)においても、今後の海洋政策および海洋科学の国際連携に関して多くの議論が行われました。海洋サミットとも称されるUNOC3の締めくくりでは、海洋保護区の拡大や、海洋汚染の抑制、海上輸送の脱炭素化、脆弱な立場に置かれた小島嶼国(SIDS)への資金動員などに関する共同声明を採択しました。また、前週に同じくニースで開催されたOne Ocean Science Congress(海洋科学会議)には、世界中の海洋科学者約2,000名が参加しました。UNOC3の科学的支援を目的としたこの会議では、今後の海洋科学の方向性として、多国間組織への支援強化や、海洋に関する多様な知識体系の統合、気候変動対策としての海洋を用いたアプローチの推進、科学と政策の一層の連携強化などが提言されました。◆11月にはブラジルにて、気候変動枠組条約の第30回締約国会議(UNFCC COP30)が開催されました。そこでは、もはや海は単なる被害者ではなく、気候変動を解決するための中心的な役割を担うべきだという大きな認識の転換があったように思われます。OPRIがパートナーとなったOcean Pavilionでも、海洋を用いた気候変動への取り組みに関する多くのパネルディスカッションやワークショップが開催され、その成果文書として「COP30ベレン海洋宣言」を発表しました。◆一方でわが国の政策に目を転じると、10月に始動した高市政権は早速に日本成長戦略会議を招聘し、官民投資の促進に向けた「重点投資対象17分野」を選定しました。その最後、17番目には「海洋」が明記されています。さらに、2.造船、9.資源・エネルギー・安全保障・GX、10.防災・国土強靭化、13.マテリアル(重要鉱物・部素材)、14.港湾ロジスティクスなど5つの分野も深く海洋に関連します。海洋国家日本が、海洋をフル活用して世界共通の課題解決と経済成長を実現していくという明確な政治的意思が表れています。◆これら国内外の情勢を踏まえ、政府は社会と連携しながら、科学に基づく海洋政策を一層強力に推進していく必要があります。今年の干支は丙午(ひのえうま)、60年に一度巡ってくる特別な年です。力強さと情熱に満ち、運気が大きく転換するタイミングだと言われています。この一年が、日本の海洋政策を大きく飛躍させる年となることを祈念するとともに、OPRIもその一端を担うべく全力を尽くします。(所長 牧野光琢)

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