Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第601号(2026.01.20発行)

プラごみ汚染を減らすためのアプローチ

KEYWORDS 環境配慮行動/海ごみ/大量消費
(国研)国立環境研究所資源循環社会システム研究室室長◆田崎智宏

プラスチックごみ汚染の国際ルールの交渉はなかなか進まないが、対策の手を緩めることは将来世代へのツケ回しとなる。対策は①消費を減らす、②流出抑制する、③代替する、の組み合わせになるが、②と③は政策と技術の役割が大きい。有効な①のために、「計る-気付く-減らす-みんなで取り組む」というアプローチを概説する。
プラごみ汚染をなくす動き
プラスチックによる海洋汚染(以下、プラごみ汚染)の問題が世界的な注目を浴びてから約10年。多くの取り組みと議論がされてきた。日本では2019年にワンウェイのプラスチックの排出を累積で25%減らすなどのマイルストーンが設定され、国際的には2040年までに、海洋だけでなく河川や湖沼などのプラごみの追加汚染をゼロにするという目標が掲げられた。2025年8月には、国際的なルール作りの6回目の議論がされたが、ルールの合意には至らず、まだ時間がかかる。参加者によれば、5回目までは各国のポジショントークばかりだったが、ようやく落としどころをつくる議論になってきたとのことである。
国際的な議論がまとまりにくいのは、ある意味で当然ともいえる。第一に、国際ルールの結論を出すには全会一致が求められる。先進国と途上国、産油国と非産油国など、国内状況や思惑が異なる国々の意見をまとめることは容易ではない。第二に、プラごみ汚染は複数の問題が絡み合う複合問題であり、人によって論点の捉え方が異なり、議論がずれやすい。第三に、軽量で耐久性があるなどの優れた物性を有するプラスチックは生活やビジネスの隅々まで浸透しており、対策には生活習慣病を治すような難しさがある。加えて、第四に、他の環境汚染物質の特徴との混同がある。多くの環境汚染物質は少しぐらいの排出なら自然環境が浄化してくれるが、プラスチックは、一部の海洋生分解性のものを除けば、海洋では分解しない。プラごみ汚染は、どんどん汚染が蓄積するというストック型の環境問題であるため、議論がまとまらないからといって対策の手を緩めてしまうと、将来世代へのツケ回しとなる汚染が発生してしまう。
対策の方向性
プラごみ汚染は、先進国においては、プラスチック製品が大量に生産・使用されることに起因し、そのごくわずかな割合が環境中に流出するという形態をとる。わずかな割合であっても相当量になることが問題である。日本の使用済みプラスチック製品の発生量に対する流出割合は0.5%と小さいが、年間の流出量は2~6万トンであり、一般的なごみ収集車でいうとおよそ2万台にもなる。なお、この流出量は、2019年の海洋プラスチックごみ対策アクションプランのものであるが、2024年の環境省調査では流出量を細分化して推計し直している。投げ捨てられたプラごみや遺失漁具などの5mm以上のマクロプラスチックが2,300~9,300トン、農薬用マイクロプラスチックや洗剤等の意図的に添加される5mm未満のマイクロプラスチックが490~3,600トン、タイヤの摩耗粉じんや道路標示材、繊維に含まれる微小繊維くずなどの非意図的に排出されてしまう5mm未満のマイクロプラスチックが17,000~23,000トンである。
対策としては、①リデュース・リユースにより、ごみ発生量を減らす。②0.5%の流出となっていたモノの行き先を適正処理かリサイクルに変える、③これまでのプラスチックとは異なる素材を使い、プラごみ汚染を起こさなくする、という3つのアプローチの組み合わせが求められる。このうち②の実現には、国民全体で平均して200回の廃棄のうち1回を環境中へ流出させているという現状なので、これを改善するには個人の努力に頼るのは難しい。例えばデポジットやポイントを活用して、使用済みプラスチック製品を返却あるいはプラごみをクリーンアップ(清掃)した人が利する状況を作るという政策をとらなければ改善は見込めないだろう。③については、技術開発やそれを促進する政策が必要である。本稿では、生活者も取り組める対策として①のリデュース・リユースに注目する。
まずは「気付き」から
しかしながら、ごみ量を減らすのは簡単ではない。どこまでごみ量を減らせるかは人によっても生活によっても異なる。世界中を見渡せば、先進国で、家族4人の年間のごみ量を1~2Lぐらい(自宅で堆肥化する分を除く)に抑えているカリスマ的な世帯もある。しかし多くの人が、いきなりそのレベルに達するわけはない。
「できることからやる」というのが典型的なアプローチとなるが、何が「できること」で「何が問題」なのかは気付きにくい。そのため「気付き」が重要となる。ダイエットで効果が高いのは、きちんと体重の記録をとることとされるように、プラスチックの量を「計る・調べる」ことから始めるのが効果的だろう。ざっくりと目分量を把握するのもよい。プラスチック製品の購入時にスマホで写真を撮って記録するという手もある。プラごみの分別をしている自治体であれば、捨てる前のプラ資源袋の中身を眺めてみるのもよいだろう。
思っていたよりも多いモノ、比較的減らせそうと思ったモノが見つかれば、しめたものである(図の右側)。

■図 プラごみのリデュース・リユースのアプローチ

リデュース・リユースをみんなで進めるには
一人でやっていても効果は限定的なので、みんなで取り組むことは大切である(図の左側)。対策行動でよく挙げられるのが、「マイ」と付くモノの利用である。レジ袋を断り、マイバッグを持参する。マイボトルを使い、ペットボトルや使い捨てカップを使わない。マイストロー、マイスプーンなどをかばんに入れる、旅行にはマイ歯ブラシなどを持っていくなどである。お店で勝手についてくることもあるので、「不要」と伝えることも大切である一方、言わなければサービスされないように社会変革を促すことも大切である。ホテル業界は、すでにそのような動向にある。また、会員カードなどの電子化でプラスチックを削減することもできる。
善良な人々の取り組みに期待するだけでなく、リデュース・リユースをしない人には少し損になる、少しお金がかかるようにする仕組みも大切である。
プラスチックを使わないことを選べない状態も課題である。出先で、コーヒーや紅茶などを飲もうとしても、使い捨てカップしか選択できないことがある。業務のオペレーションや店舗面積のために、カップを洗うことができない店舗があることは理解されるべきだが、いまだにデフォルト(標準)が使い捨てカップになっていると言わざるを得ない。イベントでもリユース食器・カップを使うケースや、マイボトルに補充するための給水機を設置するケースは見かけることが多くはなっているが、まだ標準になっているとはいえない。
より多くの人々の行動が変われば、あるいは賛同者が増えれば、法規制やルールも変えやすくなる。ネットの時代、個々の消費者の声を大きくして、企業に伝える、働きかけることがしやすくなっていることを活かした取り組みにも期待がかかる。海洋などにおけるストック型のプラ汚染を回避し、プラごみのない海や水辺を将来世代に引き渡すことができるかは、今の私たち世代が何をするかにかかっている。(了)

第601号(2026.01.20発行)のその他の記事

Page Top