Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第581号(2024.10.20発行)

事務局だより

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所主任◆藤井麻衣

◆本号では、太平洋の海洋国として古くから日本と関係の深い、太平洋島嶼国に関する記事を3本掲載しました。塩澤氏からは日本と太平洋島嶼国の関係性について、地政学的な観点や最新の状況を踏まえてご執筆いただきました。ALPS処理水の海洋放出開始からおよそ1年が経過した今夏、東京で27年ぶりに開催されたのがPALM10、そして太平洋島嶼国ウィークスです。PALM10の首脳宣言において「互いに強固なパートナーであり続けること」が誓約されたその影には、各国政府や関係者間で、お互いをより理解し合い歩み寄るためのたゆまぬ努力があったであろうと感じられます。新たな会議体である産官学民による対話プラットフォーム「FLOWERS」会議の役割に、期待が膨らみます。
◆2本目の記事は、サモア国立大学のAlofaituli氏より、南太平洋の中心に位置するサモア諸島(西側はサモア独立国、東側は米領サモア)における「知の在り方」に関するものです。サモアにおいて海と結びついた伝統的知識や文化が今も生活の一部として息づいている様子が伝わってきます。グローバリゼーションの中で、それらを守りながら次世代にどのように引き継ぐか。日本とて類似の課題を抱えています。記事を締めるAlofaituli氏の言葉が持つ重みと未来を担う次の世代へのやさしさに、はっとさせられました。
◆最後の記事は、日本と太平洋島嶼国の友好関係構築において重要な役割を果たし続けてきたJICAから、小川氏にエネルギー分野において進められてきたプロジェクトをご紹介いただきました。ソロモンやバヌアツでは住宅用電気料金が約80〜90円/kWhにもなるとのこと。我が家の今夏の電気料金(約33円/kWh)の2.5倍ほどもあります。脱炭素を目指した気候変動対策としてだけでなく、人々の暮らしの質向上のためにも、このようなプロジェクトの意義は大きいと感じます。
◆本号の3本の記事からあらためて、日本と太平洋島嶼国は、太平洋というひとつの海でつながった重要なパートナーであることを実感しました。過去・現在・未来にわたるこの重要なパートナーシップを強化、発展させ、持続可能な社会を共に築くため、力を注ぎ続けることが重要です。(主任 藤井麻衣)

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