Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第561号(2023.12.20発行)

事務局だより

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員◆小森雄太

◆2023年ももうすぐ暮れようとしている。今年の大きな変化は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する規制がわが国のみならず、世界各国で緩和され、ポストコロナへの流れが加速したことであろう。一方で、これらの出来事や流れは、コロナ禍という緊急事態により覆い隠されていたさまざまな課題をより強く、より具体的に浮かび上がらせた。これは海洋分野も例外ではなく、これらの変化や課題を振り返りながら、本号の記事を読むと、海洋やわが国が直面する現実を強く認識させられる。しかしながら、同時に未来への道程を照らすアプローチも十分に見えたのではないかとも感じられる。
◆上智大学教授の兼原敦子氏にご寄稿いただいた「統制要領下での海上保安庁の安全は確保できるのか」では、わが国周辺海域における現下の厳しい国際情勢を踏まえて、今年4月に公開された防衛大臣が海上保安庁を統制するための要領(統制要領)をめぐる諸課題をご専門やご経験の観点からご指摘いただくとともに、今後想定される展望とその対応をご示唆いただいた。
◆東京鼈甲組合連合会会長の大澤健吾氏にご寄稿いただいた「べっ甲細工の原材料安定確保とタイマイ陸上養殖技術開発」では、わが国におけるべっ甲の歴史を飛鳥・奈良時代から紐解きつつ、昨今の変化やそれに対する日本政府や国際社会の対応をご紹介いただくとともに、その原材料であるタイマイの陸上養殖を通じた海洋資源回復、そしてその先にあるであろう持続可能な開発目標(SDGs)達成へ貢献する可能性をお示しいただいた。
◆(一社)日本サステナブルシーフード協会代表の鈴木允氏にご寄稿いただいた「おさかな小学校の挑戦~島国だからこそ、海洋教育を子どもたちに~」では、魚介類を入り口に生き物の生態、漁業、食文化、歴史、環境問題などに関する教育プログラムを提供するというアプローチを通じて、海洋や漁業、海洋生物への親しみを惹起し、海洋の次世代を育成する重要性をご提示いただいた。
◆読者の皆様におかれても、これらの記事をご覧いただき、来年、そしてその先のわが国や世界の海洋政策を進めるための課題を共有していただくとともに、これらの課題を一緒に解決するための手がかりあるいは足がかりとしていただければ幸いである。今年一年のご愛読に心より御礼申し上げるとともに、どうぞ良い年をお迎えください。(小森雄太主任研究員)

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