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オーシャンニューズレター

第544号(2023.04.05発行)

「さかなの日」の制定について

[KEYWORDS]水産物の消費拡大/官民協働/SDGs
水産庁加工流通課課長補佐◆四ヶ所 信之

水産庁は、水産物の消費拡大に向けた取り組みを官民協働で推進するため、「さかな×サステナ」をコンセプトとして、毎月3日から7日までを「さかなの日」に制定し、特に11月3日から7日までを「いいさかなの日」として賛同メンバーによる水産物の消費拡大に向けた活動の強化週間と位置付けた。
2023年2月末現在709の企業・団体等が賛同メンバーとなり、水産物の消費拡大に係る取り組みを実施している。

なぜ「さかなの日」を制定したのか?

さかなの日ロゴ。さかなの色は、SDGsカラーをイメージ。

水産庁は、水産物の消費拡大に向けた取り組みを官民協働で推進するため、2022年10月に、「さかな×サステナ」をコンセプトとして、毎月3日から7日までを「さかなの日」に制定し、特に11月3日から7日までを「いいさかなの日」として賛同メンバーによる水産物の消費拡大に向けた活動の強化週間と位置付けました。
南北に長い島国である日本の排他的経済水域は、国土面積の約12倍であり、また世界で6番目の広さであるとともに、世界三大漁場(北西太平洋漁場、北東大西洋漁場及び北西大西洋漁場)のうちの一つを擁しています。わが国の周辺は、寒流と暖流がぶつかり合っていることから、冷たい水を好む魚と温かい水を好む魚の両方が回遊・生息する恵まれた海となっており、日本のまわりの海には約3,700種(うち約1,900種は日本固有)の魚類が生息しています。また、河川等の内水面においても多様な魚が生息しており、地域ごとに特色のある漁業が営まれてきました。わが国で獲れる多種多様な水産物は、地域ごとに特色のある「魚食文化」を生み出し、各地に水揚げされるさまざまな水産物をその気候・風土の中でおいしく食べるため、郷土料理や加工品が考案され、その伝統は今なお各地で受け継がれています。また、水産物は、優れた栄養特性と機能性を持つ食品であり、水産物の摂取が健康に良い効果を与えることが、さまざまな研究により明らかになっています。
しかし、わが国の食用魚介類の1人1年当たりの消費量(純食料ベース)は、2001年度の40.2㎏をピークに減少傾向にあり、2021年度には23.2㎏(概算値)まで減少しています。2011年度には初めて肉類の1人1年当たりの消費量を下回りました。魚食に関する消費者の意識については、魚料理自体は食べたいが、魚の「扱いにくさ」、「調理の手間」といった水産物のマイナス特性が家庭での消費にブレーキをかけています。また、EPA・DHAなど「健康に良い」といったプラス特性があるという認識が広がっているものの、消費拡大までには至っていない状況です。そのため、2021年3月より「新たな生活様式に対応した水産物消費拡大検討会」を開催し、同検討会のとりまとめにおいて、水産物のマイナス特性を払拭するとともに、水産物の消費機運を高める方策を検討することとされ、具体的には、「さかなの日」を制定することにより、民間企業等における水産物の消費拡大に向けた取り組みを推進することとされました。

なぜ魚食はサステナブルなのか?

水産物は、私たちの生命の維持に欠くことができない栄養素であるタンパク質の重要な摂取源です。日本人が摂取するタンパク質のうち、約17%が魚介類であり、動物性タンパク質の摂取量に占める魚介類の割合は、約30%にも上っています。
このように重要な水産物ですが、自然の生態系の一部である水産資源は、使えば消失する鉱物資源や農畜産物と異なり、食物連鎖の中で、人が手を加えずとも、自然の力によって再生産される持続可能な資源です。このため、適切に管理すれば永続的に利用が可能となる特性を持っています。漁業は、自然環境における再生産能力を利用する産業であり、こうした生態系を含めた海洋環境に配慮した漁獲を行うことで永続的に続けることができる産業です。
将来にわたって持続的な水産資源の利用を確保するため、わが国では科学的な資源評価に基づいて、漁獲可能量(TAC)による管理を基本として資源管理を行っています。現在は8魚種がTAC管理の対象となっており、2023年度に向けてTAC魚種の拡大を推進しています。これに加えて、操業期間や漁具の制限等による管理も組み合わせて、資源の保存・管理を適切に行っています。
養殖業についても、海洋環境への負担軽減が可能な沖合養殖の推進、2050年までにニホンウナギやクロマグロ等の養殖において人口種苗比100%の実現、養魚飼料全量の配合飼料への転換等により、天然資源に負担をかけない持続可能な養殖生産を推進しています。
このような特性をもつ魚を選択して食べることは、SDGsの「持続可能な生産消費形態を確保する」(目標12)ことにも繋がり、SDGs達成に向けた消費行動と言えます。このため、「さかなの日」のコンセプトを「さかな×サステナ」としました。

どのような取り組みをしているのか?

水産庁では、「さかなの日」の制定趣旨に賛同し、ともに水産物の消費拡大の活動を実施してくださる賛同メンバーを募集しています。2023年2月末現在709の企業・団体等が賛同メンバーとなり、水産物の消費拡大に係る取り組みを実施しています。例えば、水産エコラベル認証商品や低利用魚・未利用魚の販売、簡単に美味しく魚が調理できる調味料の開発や魚介類に特化した食事を提供するキッチンカーの運営、食育教室の開催などの取り組みが見られます。
また、水産庁では、「さかなの日」公式ウェブサイト(https://sakananohi.jp)を立ち上げ、賛同メンバーのイベント・フェア等の情報を発信するとともに、旬の魚の捌き方や魚を使ったレシピの紹介をはじめ、魚関係の書籍等のさまざまなコンテンツを紹介しています。2022年11月27日には、「さかなの日」キックオフイベントを開催し、さかなクンを「さかなの日」アンバサダーに任命するとともに、さかなクンによるトークイベントや水産庁PRブースにおいて、「さかなの日」や水産物の魅力について情報発信しました。
水産庁は、「さかなの日」をきっかけに、消費者の皆様に、あらためて「魚を食べること」について考え、魚食の魅力を再発見していただけるよう、官民協働で水産物の消費拡大の取り組みを推進していきます。(了)

「さかなの日」公式ウェブサイトと二次元コード

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