◆年は明けたが、津波、強大な台風、火山噴火、海洋プラスチックごみなど、海洋問題は留まるところを知らない。海洋問題を正しく知り、行動する意識をもち、世代を超えて問題への関心を共有することは大切であろう。今年はすでに走っている「国連海洋科学の10年」に加えて、第4期海洋基本計画や戦略的イノベーション創造プログラムなど、海洋立国へのロードマップも新たに始まる。またG7サミットも広島で開催される。今号も、新しい海洋観測技術の開発、若い世代からのメッセージで期待が詰まった内容となった。 ◆自然現象は音を発生する。気圧計が3.11東日本大震災の海面変動を音波すなわち空気振動として観測した。高知工科大学システム工学群の山本真行教授は、インフラサウンド(超低周波音)センサーを開発し、2016年以降、北海道から宮崎県まで計31地点に設置して、雷鳴、前線通過など種々の自然現象による空気振動を観測している。2022年1月15日のトンガの火山島の大噴火では、巨大な気圧変動で起きた海水面変動がほぼ音速で伝わり、日本への津波到達予想時間より前に海水面変動が起きたと推定される根拠を得ている。海底地震計の整備に加えて陸上設置のこのセンサーの活躍が期待される。 ◆京都大学大学院地球環境学堂の浅利美鈴准教授は、最近、SDGsや海洋プラスチック問題や脱炭素化への関心が日本で急速に高まったと分析する。学校教育での知識および著者を含む若い世代の実践活動が功を奏している。18歳以下を主対象とするSDGsネイティブ世代の行動が環境問題の解決を前進させるであろう。他方、内閣府の2019年の世論調査では、若者層のプラスチックごみ問題への関心は減少し、2022年のそれでは、関心はあるが行動しない割合が増えたという。著者は、世代を超えて一緒に挑戦する先輩世代になれればと語っている。 ◆ノルウェーの大型帆船スターツロード・レムクル号の1年8カ月の世界一周航海「ワン・オーシャン・エクスペディション」は、世界中の科学者や海洋保全活動家らを乗せて、2021年8月にベルゲンを出航した。「国連海洋科学の10年」の取り組みの一環である。(公財)笹川平和財団海洋政策研究所は、2022年8-9月のパラオから横浜まで5カ国6人の若者の参加を支援した。元沖縄科学技術大学院大学コミュニケーション・広報部のLucy Dickie氏はその一人であり、体験記をご寄稿いただいた。猛烈な台風11号が接近した際には乗船者の協力の大切さを体験し、一連の船上セミナーでは柔軟な発想と知識の共有の重要さを実感したという。海洋問題は広く深くグローバルであり、解決には国際協力が必須なのである。(窪川かおる)
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